研究課題/領域番号 |
15K17648
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武田 彩希 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (40736667)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンプトンカメラ / 電子飛跡 / ピクセル検出器 / 半導体検出器 / silicon-on-insulator / 宇宙ガンマ線観測 |
研究実績の概要 |
現在,硬X線からMeVガンマ線領域の宇宙観測は発展途上である.この分野を切り拓くには,観測装置の性能向上が鍵となる.ガンマ線の検出手法としては,固体素子のコンプトンカメラが知られているが,もし電子飛跡を検出し,同期計測が可能であれば性能はさらに飛躍する.本研究の目的は,私が宇宙X線観測用に研究開発を進めてきたイベント検出タイミング・位置情報が出力可能な「イベント駆動型SOIPIX」をベースとし,高速かつ高精度にガンマ線の到来方向を決定することが可能な「電子飛跡型半導体コンプトンカメラ」を実現することである.特に,この手法によるコンプトンカメラの原理実証,問題点の洗い出しとその解決方法を探ることを中心に進める.初年度である2015年度は,下記の成果を得た.
(1)分光性能向上のための研究開発:電子飛跡を精度良くとらえるためには分光性能の向上が重要な開発項目となる.素子内信号読み出し回路を改良したプロトタイプを開発し,性能評価を行った.そして,新型回路でのスペクトル取得に成功した.これらの成果は,国内外の学会で発表を行った.(2)イベント検出情報を用いた電子飛跡の取得:素子が出力するイベント検出情報を用いた電子飛跡のイメージ取得に成功した.一方で,ピクセル内コンパレータの論理反転時にアナログ信号へ影響を与えることを確認した.改良素子の研究開発は別途進めている.(3)電子飛跡型半導体コンプトンカメラのプロトタイプの設計検討:次年度製作予定の多層化基板について,設計検討を行った.これにより,電子飛跡型半導体コンプトンカメラのプロトタイプを製作するための準備が整った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
素子からのイベント検出情報を用いた電子飛跡のイメージ取得に成功するというファーストステップが達成できた.さらに,次年度に電子飛跡型半導体コンプトンカメラのプロトタイプとして,多層化基板によるシステムを設計開発する準備が整った.よって,今年度は順調な進展があったと言える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は実際に多層化基板を設計し,電子飛跡型半導体コンプトンカメラのプロトタイプを製作する.組み上げたシステムを用いて全素子からの信号を統合し,データを収集できる状態にする.このように,電子飛跡型半導体コンプトンカメラの原理実証を進めるためのシステム構築が次年度の目標である.
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次年度使用額が生じた理由 |
電子飛跡型半導体コンプトンカメラのプロトタイプについて設計検討を行った結果,今年度の支出を抑えて次年度使用額を生じさせることにした.より実用的な多層化基板を製作するためには,次年度使用額を含めてプロトタイプの製作費に充てることが必要であると判断したためである.
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由の通りであるが,より実用的な電子飛跡型半導体コンプトンカメラのプロトタイプを製作するための費用として使用する予定である.これにより,研究開発を効率的に進めることができる.
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