研究課題
主として宇宙ガンマ線望遠鏡フェルミ搭載のLAT検出器のデータ解析を行った。本研究テーマである可視赤外線背景放射のスペクトルと強度を見積もるためには、遠方ブレーザーのガンマ線スペクトルの精密測定が不可欠である。2015年2月にフェルミ衛星でフレアが検出された z=0.368に位置する遠方ブレーザーS4 0954+65のフェルミデータの解析を行った。このブレーザーは、TeV大気チェレンコフ望遠鏡MAGICでも超高エネルギーガンマ線が検出されたから、本研究にとって重要な天体である。その結果、TeVガンマ線が検出されたタイミングで、MeV/GeVガンマ線のスペクトルもハードになっていること、X線スペクトルがシンクロトロン放射の影響を受けてソフトになったことを発見した。また、多波長スペクトルのモデリングから、ガンマ線放射機構がシンクロトロン自己コンプトン放射ではなく、外部光子の逆コンプトン散乱であることを明らかにした。これらは可視赤外線背景放射のエネルギー密度、スペクトルを見積もるのに貴重な情報となった。また、相対論的ジェットの生成機構を解明するために、我々の銀河系内のマイクロクエーサーからのジェットも貴重な情報を与えてくれる。そのため、V404 Cygniと呼ばれる低質量X線連星の可視赤外線偏光観測も行い、ジェット中の磁場構造や粒子加速機構の解明を行った。その結果、可視赤外線の帯域では有意な偏光は検出されなかったため、放射機構として光学的に薄いシンクロトロン放射である可能性を棄却した。これは活動銀河核ジェットとは大きく異なっているが、広帯域スペクトルのモデリングなどから磁場強度や放射領域の大きさを考慮すると、光学的に薄いシンクロトロン放射は棄却され、観測結果と一致することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、遠方ブレーザーにおいてフェルミ衛星と地上の大気チェレンコフ望遠鏡で観測したGeVTeVガンマ線スペクトルから、可視赤外線背景放射のスペクトルと強度を見積もることを計画していた。昨年度はそのようなブレーザー1天体についての解析結果を論文として出版することができたため、本研究は順調に進展していると言える。それに加えて、TeVガンマ線が検出されているすべてのブレーザーのTeVスペクトルを足し合わせることにより、TeVガンマ線背景放射の下限値も導出した。また、マイクロクエーサージェットにおける磁場強度などの物理量の推定に成功した。これらは、本研究計画をさらに発展させた成果であるので、計画以上に進展していると判断した。
今年度も、これまで通りフェルミ衛星のデータ解析を中心に行う。超高エネルギーガンマ線が検出されているすべてのブレーザーについて、フェルミ衛星の8年分のデータ解析によるスペクトルの精密測定を行う。得られたGeVTeVガンマ線スペクトルから可視赤外線背景放射による吸収構造 (attenuation) を正確に導出する。解析手法については昨年度に構築できたため、本研究も滞りなく推進することができる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Astrophysical Journal
巻: in press ページ: in press
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