GeVTeVガンマ線観測による宇宙可視赤外線背景放射の精密推定と星形成史への制限

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15K17652
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 田中 康之 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (90633941)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: ガンマ線 / 活動銀河核 / 可視赤外線背景放射

研究実績の概要

遠方の活動銀河核ジェット天体について、GeVガンマ線帯域でサーベイ観測を行っているフェルミ衛星、TeVガンマ線を観測する大気チェレンコフ望遠鏡をメインとして、電波、可視、X線の多波長電磁波データの解析を行った。そして、多波長スペクトルのモデリングから可視近赤外線背景放射の強度を推定した結果、理論的に見積もられていた、星や銀河の光をすべて足しあわせた強度で説明可能であることを見出した。これは、可視近赤外線背景放射において、ダークマターをはじめとする他成分からの寄与が見られないことを示すものである。

遠方の活動銀河核ジェットのGeVTeVガンマ線観測から、可視赤外線背景放射の強度をさらに精密に推定するには、活動銀河核ジェットそのものの理解も不可欠である。このような観点から、電波/可視/ガンマ線のアーカイブデータ、可視偏光データを用いて、多数の電波銀河とブレーザーの統計解析を行い、ジェットパワー、放射強度（ルミノシティ）、磁場強度などの物理量の推定とそれらの関係性を導出した。その結果、BL Lac天体のジェットで加速できる最高到達エネルギーは、10の20乗 eVの最高エネルギー宇宙線までは達しないこと、ジェットパワーは降着物質の静止エネルギーで説明可能であり、中心ブラックホールの回転エネルギーなど、他からのエネルギー供給を必ずしも必要としないことなどを見出した。さらに、宇宙ジェットは様々な天体でも観測されているため、ジェットの物理の解明には比較研究も重要であると考え、マイクロクエーサージェットやULX (Ultra-Luminous X-ray source) ジェットなど他の天体におけるジェットの研究も行った。

研究成果

• [国際共同研究] SLAC(米国)
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: SLAC
• [国際共同研究] Nicolaus Copernicus Astronomical Center/Jagiellonian University(ポーランド)
  • 国名: ポーランド
  • 外国機関名: Nicolaus Copernicus Astronomical Center/Jagiellonian University
• [雑誌論文] Disk Jet Connection in Active Supermassive Black Holes in the Standard Accretion Disk Regime (2017)
  • 著者名/発表者名: Inoue, Yoshiyuki; Doi, Akihiro; Tanaka, Yasuyuki T.; Sikora, Marek; Madejski, Grzegorz M.
  • 雑誌名: ApJ 巻: 840 ページ: 46
  • DOI: 10.3847/1538-4357/aa6b57
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] A measurement of interstellar polarization and an estimation of Galactic extinction for the direction of the X-ray black hole binary V404 Cygni (2017)
  • 著者名/発表者名: Itoh, Ryosuke; Tanaka, Yasuyuki T.; Kawabata, Koji S.; Uemura, Makoto; Watanabe, Makoto; Fukazawa, Yasushi; Kanda, Yuka; Akitaya, Hiroshi; Moritani, Yuki; Nakaoka, Tatsuya; Kawabata, Miho; Shiki, Kensei; Yoshida, Michitoshi; Oasa, Yumiko; Takahashi, Jun
  • 雑誌名: PASJ 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: 10.1093/pasj/psw130
  • 査読あり
• [雑誌論文] High energy gamma rays from nebulae associated with extragalactic microquasars and ultra-luminous X-ray sources (2017)
  • 著者名/発表者名: Inoue, Yoshiyuki; Lee, Shiu-Hang; Tanaka, Yasuyuki T.; Kobayashi, Shogo B.
  • 雑誌名: Astroparticle Physics 巻: 90 ページ: 14
  • DOI: 10.1016/j.astropartphys.2017.01.012
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Hitomi Constraints on the 3.5 keV Line in the Perseus Galaxy Cluster (2017)
  • 著者名/発表者名: Hitomi collaboration (including Yasuyuki Tanaka)
  • 雑誌名: ApJ 巻: 837 ページ: 15
  • DOI: 10.3847/2041-8213/aa61fa
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Systematic Study of Gamma-ray-bright Blazars with Optical Polarization and Gamma-Ray Variability (2016)
  • 著者名/発表者名: Itoh, Ryosuke; Nalewajko, Krzysztof; Fukazawa, Yasushi; Uemura, Makoto; Tanaka, Yasuyuki T.; Kawabata, Koji S.; Madejski, Greg M.; Schinzel, Frank. K.; Kanda, Yuka; Shiki, Kensei; Akitaya, Hiroshi; Kawabata, Miho; Moritani, Yuki; Nakaoka, Tatsuya; Ohsugi, Takashi
  • 雑誌名: ApJ 巻: 833 ページ: 77
  • DOI: 10.3847/1538-4357/833/1/77
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Baryon Loading Efficiency and Particle Acceleration Efficiency of Relativistic Jets: Cases for Low Luminosity BL Lacs (2016)
  • 著者名/発表者名: Inoue, Yoshiyuki; Tanaka, Yasuyuki T.
  • 雑誌名: ApJ 巻: 828 ページ: 13
  • DOI: 10.3847/0004-637X/828/1/13
  • 査読あり
• [雑誌論文] Binary black hole merger rates inferred from luminosity function of ultra-luminous X-ray sources (2016)
  • 著者名/発表者名: Inoue, Yoshiyuki; Tanaka, Yasuyuki T.; Isobe, Naoki
  • 雑誌名: MNRAS 巻: 461 ページ: 4329
  • DOI: 10.1093/mnras/stw1637
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The soft gamma-ray detector (SGD) onboard ASTRO-H (2016)
  • 著者名/発表者名: Watanabe Shin et al. (including Y. Tanaka)
  • 雑誌名: Proceedings of the SPIE 巻: 9905 ページ: 13
  • DOI: 10.1117/12.2231962
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The ASTRO-H (Hitomi) x-ray astronomy satellite (2016)
  • 著者名/発表者名: Takahashi Tadayuki et al. (including Yasuyuki Tanaka)
  • 雑誌名: Proceedings of the SPIE 巻: 9905 ページ: 17
  • DOI: 10.1117/12.2232379
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The quiescent intracluster medium in the core of the Perseus cluster (2016)
  • 著者名/発表者名: Hitomi collaboration (including Yasuyuki Tanaka)
  • 雑誌名: Nature 巻: 535 ページ: 117
  • DOI: 10.1038/nature18627
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] EVN Observations of HESS J1943+213: Evidence for an Extreme TeV BL Lac Object (2016)
  • 著者名/発表者名: Akiyama, Kazunori; Stawarz, Lukasz; Tanaka, Yasuyuki T.; Nagai, Hiroshi; Giroletti, Marcello; Honma, Mareki
  • 雑誌名: ApJ 巻: 823 ページ: L26
  • DOI: 10.3847/2041-8205/823/2/L26
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] ジェットを伴う潮汐破壊現象におけるガンマ線放射の探索と放射機構の解明 (2017)
  • 著者名/発表者名: 田中康之、井上芳幸
  • 学会等名: 日本天文学会春季大会
  • 発表場所: 九州大学
  • 年月日: 2017-03-15
• [学会発表] IceCube neutrino の電磁波 ToO 観測の現状と今後 (2017)
  • 著者名/発表者名: 田中康之
  • 学会等名: 突発・変動天体の多波長連携観測
  • 発表場所: 茨城大学
  • 年月日: 2017-03-06
• [学会発表] フェルミ衛星の現状とIceCubeニュートリノイベントの可視近赤外線フォローアップ観測 (2017)
  • 著者名/発表者名: 田中康之
  • 学会等名: マルチメッセンジャー天文学研究会
  • 発表場所: 千葉大学
  • 年月日: 2017-03-03
  • 招待講演
• [学会発表] フェルミ衛星によるMeV/GeVガンマ線観測の成果とフェルミからの期待 (2017)
  • 著者名/発表者名: 田中康之
  • 学会等名: 第１回MeVガンマ線天文学研究会
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 2017-02-28
  • 招待講演
• [学会発表] IceCube 高エネルギーニュートリノ事象の可視近赤外線フォローアッ プ観測 (2017)
  • 著者名/発表者名: 田中康之
  • 学会等名: 木曽広視野サーベイと京都 3.8m 即時分光によるタイムドメイン天文学の推進
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 2017-02-21
• [学会発表] 大学間連携によるニュートリノイベントフォローアップ観測の提案 (2016)
  • 著者名/発表者名: 田中康之
  • 学会等名: 第 7 回光赤外線大学間連携ワークショップ
  • 発表場所: 京都大学
  • 年月日: 2016-11-21
• [学会発表] No Evidence of Intrinsic Optical/Near-Infrared Linear Polarization for V404 Cygni During its Bright Outburst in 2015: Broadband Modeling and Constraint on Jet Parameters (2016)
  • 著者名/発表者名: Yasuyuki Tanaka
  • 学会等名: INTEGRAL 2016 Conference
  • 発表場所: アムステルダム、オランダ
  • 年月日: 2016-10-11
  • 国際学会
• [学会発表] GeV - TeV ガンマ線データによる HBL 天体の平均 SED とTeV ガンマ線背景放射の赤方偏移分布 (2016)
  • 著者名/発表者名: 田中康之、井上芳幸、深沢泰司
  • 学会等名: 日本天文学会秋季大会
  • 発表場所: 愛媛大学
  • 年月日: 2016-09-14