研究課題/領域番号 |
15K17653
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
音野 瑛俊 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20648034)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 長寿命グルイーノ / 半導体検出器 |
研究実績の概要 |
LHC加速器は2015年、13 TeVの重心系エネルギーでの運転を開始した。申請者は、ATLAS検出器の内部飛跡検出器の1つである SemiConductor Tracker (SCT) の運転に取り組んだ。特に、オンライン及びオフライン取得データの早期解析の責任者として、大学院生らと共にSCTのパフォーマンスの解析し、DAQへの逐次的なフィードバックを行った。その結果、取得データの99.4%においてSCTを正常に動作させることに成功している。また2016年の運転に向けた基礎的な研究を下記の大学院生と進めた。
1) 九州大学の調翔平(D1): 2015年、陽子ビームのバンチ間隔が50nsから25nsへ移行した。この変更が検出効率に与える影響を調べ、最適なデータ取得手法を提案した。 2) 東京工業大学の早川大樹(M2): 2015年、読み出しエレクトロニクスの数は90モジュールから128モジュールに増やした。この読み出しエレクトロニクスの異常動作が荷電粒子の飛跡再構成に与える影響について、1モジュールごとに評価した。特に影響の大きいモジュールをリストし、ケーブルの繋ぎ換えを提案した。
そして2015年に取得したデータを用いてビーム衝突点から離れて崩壊する長寿命グルイーノの探索を東京工業大学の本橋和貴(D2)と開始した。通常の解析では再構成しない飛跡をもとに探索するため、2012年までのLHC-Run1で開発した専用のアルゴリズムの整備を行い、期待する性能を発揮させた。探索結果の公表は2016年夏の国際会議を目標として進めている。素粒子理論の研究者である、DESYの白井智とミネソタ大学の永田夏海と、長寿命の新粒子を生む新たなシナリオについて検討し、ATLAS検出器での発見可能性を議論した論文を2編執筆し、受理された。これらのシナリオについても 取得データを用いて探索の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SCTの高い性能の発揮および長寿命グルイーノの探索についての進展は予想の範疇である。それに加えて、SCTにおいて研究実績の概要に記した2つの基礎的な研究を通じて、2016年以降の運転に提案を行ったことは、予想を上回る成果である。また、素粒子理論の研究者と出版した2編の論文についても、当初の想定にはなかった成果である。
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今後の研究の推進方策 |
SCT検出器の高い性能を引き続き発揮させ、さらに2015年に提案したアイデアを運転に反映する。2015年の取得データを用いた長寿命グルイーノの解析は2016年の夏の国際会議での公表を目指す。そして、素粒子理論の研究者と検討した新たなシナリオを加え、2016年の取得データを用いた探索を行い、その結果を2016年の冬の国際会議での公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、2016年3月の日本物理学会 第71回年次大会(2016年)への出張で全額を使い切る予定であったが、同時期に行われる国際会議(51st Rencontres de Moriond on QCD and High Energy Interactions)での登壇が直前に決まり、この出張はKEKからのサポートを頂いたため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度のCERNへの渡航費として使用いたします。
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