研究実績の概要 |
LHC加速器は13TeVの重心系エネルギーでの運転を2015年に開始している。2015年は4fb-1のデータを取得したが、2016年はそれをはるかに超える40fb-1のデータを蓄積した。単位時間あたりの衝突頻度は設計値を超え、それぞれの検出器はデータの読み出し方法の再考を迫られている。 申請者は、ATLAS検出器の内部飛跡検出器の1つであるSemiConductor Tracker(SCT)の運転に取り組み、これまでは取得データの早期解析責任者を務めてきた。そして2016年6月より運転副責任者を務め、高まる衝突頻度の中も円滑なデータ取得を実現した。2017年1月より運転責任者を務め、現在は2017年のLHCの運転開始に向けた準備を進めている。 長寿命グルイーノの探索を2016年に取得したデータを用い、その結果を2017年3月のRencontres de Moriond QCDで公表した(ATLAS-CONF-2017-026)。新粒子の発見には至らなかったが、申請者らの2015年に掲載された2本の論文(Phys. Lett. B748, 24 (2015), JHEP 1510 (2015) 086)で提案した新しい手法を実際に解析に取り入れ、探索領域を大きく広げることに成功した。 また、素粒子理論の研究者らと新たに3本の論文を執筆し、1本は既に掲載済み(JHEP 1703 (2017) 025), 2本は査読中である(arXiv:1702.08613, arXiv:1703.09675)。これらの論文で提案した探索は2017及び2018年までに取得する120fb-1のデータを用いて解析を遂行し、新粒子の発見を目指す。
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