研究課題
ゲージ・重力対応の非平衡物理への応用の第一歩としてクォーク-反クォーク対を考えた。クォーク-反クォーク対は重力側では反ドジッター時空の境界に端点を持つ古典的な弦で記述される。我々はその弦のダイナミクスを数値的に追うことでクォーク-反クォーク対の非平衡過程を調べた。その結果、弦の上にカスプが出来ることがあることが分かった。また、その現象を"運動量"空間で見ると、時間が経つにつれてエネルギーが小さいスケールに流れていき、最終的にはエネルギースペクトルが冪則に従うことが分かった。この事実により、クォーク-反クォーク対を結ぶflux tubeにはある種の乱流現象が存在すると結論付けた。この乱流現象をゲージ理論側で解釈すると、クォーク-反クォーク対は時間が経つにつれて、高励起状態にシフトしていくことを意味している。我々は、さらに上記のセットアップの発展として、クォーク-反クォーク対に多くのエネルギーを注ぎ込んだらどうなるかをゲージ・重力対応を用いて調べた。その結果、クォーク-反クォーク対の束縛エネルギー以上のエネルギーを弦に注入すると、反ドジッター時空のポアンカレホライズンに弦が落ちていってしまうという現象を発見した。また、弦の上の幾何を調べると弦の上に事象の地平面ができていることも確認できた。つまり、クォークと反クォークは因果的に遮断されてしまうことを意味する。よって、クォークと反クォークの解離現象を重力理論の観点で再現できたことになる。
1: 当初の計画以上に進展している
古典的な弦の運動を任意の時空上で解く手法を開発したため。この手法を応用することで、今後の研究の幅が大きく広がると考えられる。
当初の計画通りすすめる。
日本国内での国際会議の発表が多く、予定より旅費が少なく済んだため。
次年度に海外での成果発表に用いる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
JHEP
巻: 1603 (2016) 035 ページ: 1-26
PTEP
巻: no.8, 083B04 ページ: 1-26
巻: 1506 (2015) 086 ページ: 1-35