物性系ではしばしば強いレーザーを用いることにより非平衡現象を駆動する。レーザーを系に当て続けると、放射のエネルギーと散逸が釣り合った状態に落ち着 く。このような状態はフロッケ状態と呼ばれ、光誘起現象を理解する上で重要な役割を果たしている。我々は重力側で、周期的に時間依存する電場を導入するこ とにより、ホログラフィックなフロッケ状態を実現した。絶縁体に周期電場を掛けると何か起きるだろうか?時間依存しないDC電場の場合、電場が弱いと電流は 流れないが、強くしすぎると絶縁破壊が起こり電流が流れ出す。つまり、ある閾値の電場が存在し、その前後で絶縁相と伝導相の転移が起きるのである。これは 実際に重力側の計算でも確認されている。AC電場の場合は、電場の大きさに加えてその振動数がパラメータとして加わる。つまり、閾値の電場は振動数依存する はずである。我々はその閾値を重力側の計算で決定することに成功した。その結果で興味深い点は、振動数をエキシトンの励起エネルギー近くに微調整するとほ ぼゼロの電場で相転移を起こせることである。エキシトン励起エネルギー近傍ではエキシトンが多く生成される。それにより、クーロン力がデバイ遮蔽され、エ キシトンが束縛状態を作るのが難しくなる。その結果、弱い電場でも電流が流れるのである。この研究は、非平衡物性物理学の一つの目標である''光''による物 性の制御をホログラフィックに実現している。我々は、最終的にはこれらの結果の実験的検証も視野に入れている。実際、我々は大阪大学の物性実験グループと 打ち合わせを行っており、検証実験も始動している。
|