研究課題/領域番号 |
15K17659
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
横山 修一郎 立教大学, 理学部, 助教 (80529024)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インフレーション / 原始ブラックホール / 初期密度揺らぎ |
研究実績の概要 |
初期ゆらぎの非ガウス性はインフレーションモデルの峻別にとって重要な情報をもたらすと近年考えられているが、代表者は共同研究者と共に将来の広視野銀河サーベイで非ガウス性にどの程度の制限を与えることができるかを調べ、現在の宇宙マイクロ波背景輻射観測からの制限より強い制限が期待できることを明らかにした。 また、将来大型の電波干渉計を用いて赤方偏移した中性水素21cm線を観測し、初期天体形成期の宇宙の姿に迫る計画がある。この中性水素21cm線観測も、初期ゆらぎの非ガウス性に関する情報をもたらしてくれると期待されている。代表者は共同研究者と共に初期ゆらぎの非ガウス性を制限する際に用いられる21cm線ゆらぎの高次相関に関する研究を行った。 さらに、初期宇宙において初期ゆらぎが直接重力崩壊を起こして形成されると考えられている原始ブラックホールは暗黒物質候補として注目されたり、インフレーションモデルに対しても重要な知見を与えてくれる天体として盛んに研究されている。代表者は、2015年に初めて観測された重力波の源がこの原始ブラックホール連星である可能性について精査し、宇宙の全暗黒物質量の1000分の1程度がこの原始ブラックホールであるならば、観測された重力波を十分説明できることを明らかにした。この研究をまとめた論文はPhysical Review Letters誌のEditor's suggestionに選定され、プレスリリースも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、論文を5本発表した。そのうち2本は当初の計画にもあげた初期ゆらぎの非ガウス性に対する将来観測での検証可能性について議論したものである。また上でもあげた原始ブラックホールに関する研究は、当初の計画にはなかったが、この原始ブラックホールに関する研究は本研究の大きな目標でもあるインフレーションモデルの検証につながる。また原始ブラックホール形成には初期ゆらぎの非ガウス性も影響を与えることがあり、今後の研究対象と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
4年間の本課題も残り2年となったが、まず平成28年度に行った将来大規模銀河サーベイ用いた初期ゆらぎの非ガウス性の検証に関する研究を行う。初期ゆらぎの非ガウス性は幾つかのタイプに分類されるが、これまであまり検証されてこなかったタイプの非ガウス性に着目する。一方で、近年宇宙の加速膨張を説明するために、一般相対性理論を拡張した重力理論に関する研究が盛んに行われている。この拡張された重力理論を検証する一つの方法として、大スケールの銀河分布の高次相関が考えられる。その意味で、重力理論の拡張と初期ゆらぎの非ガウス性は縮退する可能性があるが、両者を精査しておくことは重要である。今後の研究では、当初の計画に加えて拡張された重力理論の検証も行っていこうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究内容を論文としてまとめることに予定より時間を要し、海外における国際学会に出席し研究成果発表をするという段階に至らなかったため。また、共同研究者が多忙であったため、直接あって議論する機会をなかなか設けることができず、TV会議で議論する機会が多くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度前半には3本程度の論文を出版する予定である。その成果発表のため、5月に韓国で行われる国際会議に出席し、8月にはフランスで行われる会議COSMOに出席する予定である。その際の出張費として使用する予定である。さらに国内の共同研究者との打ち合わせのための旅費としても使用する。
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