研究課題
本研究の目的は、線形摂動論の範疇には現れなかったような非線形進化特有の現象に着目し、初期宇宙における宇宙論的揺らぎの非線形進化に対する精査を行ない、宇宙マイクロ波背景輻射 と宇宙の大規模構構造の観測を通じて初期宇宙モデルの検証を行うことである。最終年度となる2018年度は、主に1)初期揺らぎの非線形性を通じた初期磁場の新たな検証可能性、2)初期揺らぎの非線形性に対する新たな観測的検証、3)物質揺らぎの非線形成長を通じた修正重力理論の検証可能性、4)原始ブラックホールに関する研究、5)初期テンソル揺らぎの統計的非等方性の検証可能性について議論した。1), 2), 5)に関しては交付申請書に記載した研究実施計画と沿ったものとなっている。4)は、研究実施計画にはないが、本研究期間に大きな話題となったLIGOによるブラックホール連星からの重力波検出に端を発する。5)は、初期揺らぎの非線形性検証の道具として考えていた物質密度揺らぎの非線形性の観測を現在の加速膨張を説明する為に盛んに研究されている修正重力理論の検証へと応用する研究となっており、本研究の副産物的な位置付けとなっている。以上のことは論文にまとめ、2018年度中に出版された論文は4本、さらに2本を投稿した(両者とも2019年4月に出版決定となっている)。また国際会議でも、これらの研究内容に関する招待講演を数件行った。研究期間全体としては、研究実施計画に記載した内容に沿い、1)銀河分布の3点相関を用いた初期揺らぎの非線形性の検証可能性、2)電波干渉系を用いた高赤方偏移における中性水素分布の非線形進化に関する精査、3)初期磁場の新たな観測的検証、4)初期揺らぎの非線形進化が重要となる初期宇宙モデルの精査、5)原始ブラックホールに関する研究などを中心に行った。成果として、研究期間中に約30本の論文を出版することができた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件)
Journal of Cosmology and Astroparticle Physics
巻: 2019, 02, 033 ページ: 1~13
10.1088/1475-7516/2019/02/033
Physical Review D
巻: 97, 103517 ページ: 1~12
https://doi.org/10.1103/PhysRevD.97.103517
巻: 98, 083518 ページ: 1~7
https://doi.org/10.1103/PhysRevD.98.083518
巻: 98, 083522 ページ: 1~7
https://doi.org/10.1103/PhysRevD.98.083522