研究課題
本研究を遂行する上で重要なポイントが二つある。(1)一つは炭素14標的の開発であり、(2)もう一つはこの標的を用いた偏極陽子弾性散乱測定である。炭素14は粉末状でしか購入出来ず、油圧プレスで固めて標的を自作する必要がある。しかし炭素14は放射性同位体であり製作した標的は非密封RIとなるため、安全な標的の作成、保管 、使用が求められる。(1) 今年度はまず炭素14標的の作成を行った。標的作成は大阪大学核物理研究センター(RCNP)内にあるドラフト装置内で行われた。事前に安定同位体である炭素12と炭素13を用いて作成試験を何度も繰り返しており、本番では手間取ることなく順調に標的を作成をする事が出来た。さらには丈夫な標的を作成する為の条件を探査する事も出来た。昨年度、RCNP内外の有識者から数々の助言を頂きながら安全対策に時間を費やしたおかげで、作業中被曝する事なくまた周囲も汚染させる事なく作成を終える事が出来た。(2) 標的作成に成功した事により、さらに年度末にはRCNPにて300 MeVの偏極陽子ビームを用いて弾性散乱測定も行った。実験中においても標的の安全な取り扱いが要求されるが、こちらも昨年度から対策に時間を費やしてきたおかげで実験中被曝する事なく周囲も汚染させる事なく実験を遂行する事が出来た。実験自体も計画していた散乱角度の範囲を測定する事に成功した。但し、炭素14標的からの散乱陽子の収量が予想していたよりも少なく今後のデータ解析に注意が必要である事が判明した。
2: おおむね順調に進展している
研究初年度から本年度にかけてほぼ予定位通りに(1)RCNPセンター長直属の諮問機関「炭素14安全委員会」における安全審査、(2)標的作成、保管、 使用時に必要な装置の製作を行う事が出来た。これにより本研究を遂行する上で重要なポイントである炭素14標的の開発と偏極陽子弾性散乱測定を今年度中に行う事が出来た。研究計画では本年度中に偏極陽子弾性散乱測定の解析も行う予定であった。しかしマシンタイムの都合上、偏極陽子弾性散乱測定が行われたのは年度末の3月であったため、その部分は次年度にずれ込む事になった。以上より解析開始時期がずれる事になったが最大の山場と言える炭素14標的の開発と偏極陽子弾性散乱測定を計画していた年度内に終える事が出来たので(計画していた実験を全て終える事が出来たので)、おおむね順調に進展していると言える。
最終年度は実験データを解析し、結果を学会や誌上で報告する事に尽力する。現時点で炭素14標的からの散乱陽子の収量が予想していたよりも少ない事が判明しているので、その点に注意しながら解析を行う。データ整理で最も時間を要するのは誤差の評価である事が分かっているので、その計算方法と計算機資源の最適化を行う事で要する時間の短縮を試みる。
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Physics Letters B
巻: 760 ページ: 482-485
http://doi.org/10.1016/j.physletb.2016.07.021