研究課題/領域番号 |
15K17662
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
須原 唯広 松江工業高等専門学校, 数理科学科, 講師 (10708407)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クラスター構造 / 中性子過剰核 |
研究実績の概要 |
現実的核力から出発したクラスター構造計算のための模型開発が進んだ。具体的には、2つの模型がある。一つはテンソル最適化反対称化分子動力学(TOAMD)で、もう一つは高運動量成分を取り入れたAMD(HMAMD)である。 TOAMDに関してはこの枠組が核力の特徴である強い斥力を取り扱える模型であることを示した。また、相関を扱う標準的な方法であるJastrow法よりも相関をより取り込める模型であることを示した。これによって、実際に現実的核力から出発してクラスター構造計算を行う基本的な準備ができていることが明らかになった。 HMAMDは基底波動関数のガウス関数の中心パラメーターの虚部を非常に大きく取ることで、通常では取り込むのが難しい核力からくる高運動量成分を効率的に取り込むことができる、という模型である。虚部を大きく取るときに、原子核中の核子をペアに組み、それらを逆向きの虚部(運動量)を持つようにしながら、多数の重ね合わせを行い、より精密な波動関数を得る、ということを行う。今年度はこの模型を開発し、この模型が精密計算にかなり近い結果を与えることをtと4Heで示した。 TOAMDは模型空間が広く、様々な相関をうまく取り込めるという大きな利点があるが、計算コストが大きくなるという問題がある。またHMAMDは計算は簡単であるものの、完全な解を得るのは難しいという問題がある。この2つの模型を組み合わせた場合に、お互いを補い合いながら良い結果を得ることができることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現実的核力から出発したクラスター構造計算のための模型の性質を調べ、利点と問題点をしっかり理解することができた。問題点については解決方法も考え、それがうまくいくことを確認できた。これは大きな成果であると言える。 一方で、伝統的なクラスター模型を用いたC同位体の研究はほとんど進展しなかった。こちらに時間をさくことができなかったことが原因である。 大きな成果を得たことと、ほとんど進まなかったことを合わせて、おおむね順調である、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高運動量成分を取り入れたAMD(HMAMD)の模型開発を中心に進める。具体的にはHMAMDを5Heに適用し、現実的核力から出発したクラスター構造研究を具体的に進める。計算方法としてはt-dチャンネルとα-nチャンネルの重ね合わせを行い、低エネルギー状態のシェルモデル的状態と高励起のクラスター的構造状態の同時再現を行う。 また、伝統的なクラスター模型を用いた中性子過剰核のクラスター構造計算も進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた研究会が、本務のため参加不可能になったため次年度に繰り越すことにした。国際会議への旅費として使用する予定である。
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