研究課題/領域番号 |
15K17670
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
水田 晃 国立研究開発法人理化学研究所, 戎崎計算宇宙物理研究室, 研究員 (90402817)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一般相対論 / 磁気流体シミュレーション / 宇宙ジェット / 降着円盤 / ブラックホール / 宇宙線 / 航跡場加速 |
研究実績の概要 |
活動銀河核ジェットは最高エネルギー宇宙線(~10の20乗eV)の加速候補天体であるが、どこでどのような物理機構で加速されているかは未知である。Diffusive shock acceleration モデルは粒子シミュレーションでよく調べられているが、近年Tajima & Dawson(1979)で提唱された航跡場加速機構を宇宙線加速に応用することで、活動銀河核ジェット中で粒子を最高エネルギー宇宙線にまで加速できるモデルが提唱された(Ebisuzaki & Tajima (2014))。降着円盤内部で増幅された磁場によって生じる大振幅Alfven波がジェット中に伝播すればプラズマ中を伝播する短パルスレーザーによる荷電粒子の加速と同様、宇宙線が加速されるというものである。 鍵となる降着円盤内部での磁場増幅の時間変動、そのジェットへの影響を調べるため、3次元一般相対論磁気流体数値実験を行った。高効率のジェット形成を期待しブラックホールのスピンパラメータを0.9とした。円盤内縁付近ではプラズマベータ値が1のオーダーになるまで磁場が増幅され、質量降着率には急激な増加と終息の繰り返しが見られた。極軸方向に生成されるジェット中にもフレア的な電磁エネルギーのパルスが伝搬するのが見られ、イベントホライズン近傍での質量降着率との相関が見られるものもあった。これらの時間変動は円盤内縁付近の磁場増幅によるものであり、Ebisuzaki & Tajima (2014)で評価された時間変動と同等のものが生じていることが数値シミュレーションでも確かめられた。同様の計算を初期条件で軸対称を仮定し、軸対称を壊す擾乱を与えず計算すると質量降着率が小さくなり、ジェット中の電磁エネルギーのフレアが見られなかった。これは、降着円盤内部で角運動量輸送を担う、ポロイダル磁場が回転によってトロイダル磁場に変換されるだけで、3次元計算で見られたポロイダル磁場を回復するメカニズムが働かないためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元一般相対論磁気流体コードのテストを行い、実際にブラックホール降着円盤のシミュレーションを行った。高効率のジェット形成を期待し、ブラックホールのスピンパラメータを0.9とし、降着流の時間変動、極軸方向に生成されるジェットの特性を調べた。本研究の鍵であった、円盤内縁付近の磁場増幅に起因する質量降着率、ジェット中の電磁エネルギーに時間変動が見られ、宇宙線加速の応用への議論が可能であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
最高エネルギー宇宙線にまで加速しうる大振幅のAlfven波を生成するには、円盤内部での磁場増幅の時間スケールが重要である。昨年度は限られたブラックホールスピンパラメータ、初期磁場形状の場合のみを調べたが、今後、初期磁場形状依存性、ブラックホールスピンパラメータ依存性を調べる。また、降着円盤内部の磁場増幅は解像度依存性が考えられ、高解像度計算によって、系の振る舞いの理解が正しいものであるかどうかを検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現段階で得られた結果を論文化する際に投稿料とする予定であったが、受理、出版に至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の出版費用に充てる予定である。
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