研究課題
回転するブラックホール周りの降着円盤における磁場増幅と散逸に起因する円盤の時間変動性を調べるため3次元一般相対論的磁気流体シミュレーションを行った。いくつかのコードの改善を行った上、磁場増幅の物理である磁気回転不安定性をより精度よく捕らえるため、従来の計算よりも球座標での方位角、極角に関して2倍の高解像度計算を行い解析を行った。ブラックホールの無次元回転パラメータが0.9という高速回転ブラックホールの場合、円盤の数回転程度の時間スケールでの磁場増幅が円盤内縁付近で見られ、その後、磁気エネルギーが散逸するのが見られた。磁場増幅の時間スケールは今回の解像度で捕獲できる磁気回転不安定性の波長に対する成長率と無矛盾であった。系では磁場増幅、磁気散逸が繰り返し起きるが、その時間スケールが回転周期の10倍程度と近年の他の研究と同程度の時間スケールであることが確認できた。ブラックホールのホライズンでの質量降着率にも、磁場増幅、減衰と同期する時間変動が見られ、円盤内縁付近での磁場増幅がアルファ粘性の役割を果たしていることが示された。極軸周りには低質量密度、磁場優勢の高ポインティング光度のジェットが形成され、このジェットも円盤内部での磁場増幅、質量降着率お同じ時間変動が見られた。高ポインティング光度の時期には電磁流束が、円盤内部での垂直方向のアルフヴェン流束と同程度となっており、円盤内部での磁気散逸の時に鉛直方向に放出された電磁エネルギーが電磁フレアの源となっている。高ポインティング光度のジェットは大振幅のアルフヴェン波が含まれており、ポンデラモーティブ力による荷電粒子の加速が期待され、加速された陽子は最高エネルギー宇宙線、加速された電子はガンマ線放射に寄与し、ブレーザーの活動性が説明でき、ガンマ線観測で見られる時間変動と比較しよい一致を示した。
2: おおむね順調に進展している
コードの改良などを行い改善を行った結果、計算結果が物理的にも妥当なものが得られるようになった。現在の結果を論文化し、異なった磁場配位を初期条件とする計算を行なっている。
これまでとは異なった磁場配位での計算を行い、論文化すると共に、観測では決定が困難であるブラックホールのスピンをパラメータとして、その依存性を議論していく。ブラックホールのスピンによって円盤内縁の半径が異なってくるため、スピンによって磁場増幅がおきる半径が変化し、磁場増幅などの時間スケールの違いが見られるか等を調べる。また、より高解像度計算も行いより高精度の計算を行う。
論文出版費用を確保していたが、論文推敲中に追加すべき解析が生じ論文投稿が遅れたため、論文出版に観する費用を次年度に消費することとなった。
追加の解析がほぼ完了し、論文投稿できる状態となったので、論文出版費用として用いる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
The Astrophysical Journal
巻: 828 ページ: article id. 93
10.3847/0004-637X/828/2/93