研究課題/領域番号 |
15K17671
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
井坂 政裕 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (40708434)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイパー核 / バリオン間相互作用 / バリオン間三体力 |
研究実績の概要 |
ハイパー核は、通常の原子核にsクォークを含むバリオン(ハイペロン)が加わったバリオン多体系である。本研究の目的は、ラムダ粒子が核の様々な構造・変形状態に結合することで現れる新奇な状態を明らかにするとともに、ハイパー核の定量的な構造計算によってハイペロンを含むバリオン間三体力のハイパー核における効果を理論的に解明することである。具体的課題として、(1)“ラムダ粒子の結合で現れる新奇な回転帯の構造と生成断面積の予言”及び(2)“ラムダ粒子の束縛エネルギーの系統的予言とバリオン間三体力の効果”に取り組む計画である。 本年度は、主に課題(2)に取り組んだ。課題(2)では、中性子星の理論研究で存在が議論されているバリオン間三体力が、地球上の実験で生成可能なハイパー核の束縛エネルギーにどのような影響を与えるのかを明らかにする。その際、具体的には、質量数10-60程度の非常に広い質量数領域のハイパー核を対象とした。これらのハイパー核は様々な構造を持ち基底状態の密度分布が核によって大きく異なるため、相互作用の密度依存性を介して、バリオン間三体力の有無がラムダ粒子の束縛エネルギーに影響すると考えられる。本研究では、三体力を含まず二体力のみの場合と三体力を含む場合とを比較し、三体力による付加的な密度依存性により、ラムダ粒子の束縛エネルギーに違いが現れることを明らかにした。さらに、変形などの核構造も相互作用の密度依存性を通して束縛エネルギーに大きく影響することを明らかにした。したがって、こうした三体力効果をハイパー核の実験データを通して明らかにするためには、核の様々な変形など構造を十分に記述した上で理論計算を実施し、実験データと比較・分析する必要があると考えられる。この成果は、日本物理学会年次大会及びハイパー核物理に関連する国際研究会にて口頭発表した。さらに、誌上論文として現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイパー核の束縛エネルギーにおけるバリオン間三体力の効果と、その密度依存性との関連を明らかにすることができた。こうした効果の模型依存性を明らかにすることが今後の課題であるが、その準備となる分析も進みつつある。 ハイパー核生成断面積の予言については、準備となるハイパー核の構造計算は進行しつつあるが、反応計算の部分については今後本格的に取り組む必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、課題(2)“ラムダ粒子の束縛エネルギーの系統的予言とバリオン間三体力の効果”に関しては、性質の異なる模型相互作用を用い、三体力効果の模型依存性を明らかにする。課題(1)“ラムダ粒子の結合で現れる新奇な回転帯の構造と生成断面積の予言”について、Mgハイパー核についての準備となる計算は既に行っている。今後は、ハイパー核生成断面積を計算する部分について模型の拡張を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は次の通りである。 1)当初予定していた、米国での国際会議への参加を取りやめた点 2)国内学会・国内研究会を利用して共同研究者や研究協力者と議論できたため、共同研究打ち合わせを目的とした国内出張の回数を減らせた点
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次年度使用額の使用計画 |
今年度得られた成果を関連する国内外の研究会・学会等で発表するため、出張旅費と会議参加費の大幅な増加が見込まれる。また、共同研究者との打ち合わせのための出張を計画している。さらに、個人用計算機とその周辺機器の購入を考えている。
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