研究課題/領域番号 |
15K17674
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
横田 紘子 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50608742)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強弾性体 / ドメイン境界 / 非線形光学 / 光第2高調波 |
研究実績の概要 |
フェロイックス物質におけるドメイン境界科学の創製を目指し、初年度は強弾性体CaTiO3に着目をして研究を行った。強弾性体は応力印加により歪が生じ、それに応じてドメイン境界構造が変化する。これまで申請者らは光第2高調波顕微システムを用いて、ドメイン境界がバルクとは異なり、極性を有することを明らかにしてきた。平成27年度はそれをさらに発展させ、応力印加によりどのような変化が生じるのかを明らかにすることを目的に実験を行った。この目的を達成するため、応力印加を可能にする装置の開発から行った。マルチメータを用いることでどの程度試料をひずませたのかを評価できるような装置を自作し、圧縮応力印加を可能とした。この装置を用いて、異なる結晶方位から応力印加を行い、その様子を偏光顕微鏡のもとで観察した。その結果、応力に対してドメイン境界が変化しやすい方位とそうでない方位が存在することがわかった。また、応力を印加すると、それまで存在していたドメイン境界に対して垂直な方向に新しいドメイン境界が発現することが明らかとなった。このドメイン境界を光第2高調波顕微鏡を用いて観察した結果、この新しく発生したドメイン境界も極性を持つことがわかった。また、ドメイン境界はくさび形に成長していくことも明らかにした。偏光依存性を測定することにより、この新しく発生したドメイン境界のもつ対称性を決定することに成功した。これらの実験事実は、強弾性体ドメイン境界が外部刺激によって制御可能であることを示しており、デバイスへの応用が可能であることを示唆しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である、応力印加装置はまだまだ改良の余地はあるが、使用することは可能であり、実際に実験を行い、研究成果も出ているため、おおむね順調に進展しているといえる。その一方で、装置の故障などが相次いだため、当初予定していた空間分解能向上のためのステッピングモーターステージの導入などは見送る結果となってしまった。この点は次年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は3次元観察を行うことを第一の目的とする。また、極性方向を一意に決定することを目的に干渉実験にも取り組んでいく。試料から発生するシグナル強度が非常に微弱であるため、参照波をそれと同程度まで弱くする必要があり、これらが課題としてあげられる。 また、強弾性体以外の試料のドメイン境界についても着目をして実験を行っていく。特に、反強誘電体として知られているジルコニウム酸鉛においては反位相境界の存在が知られており、この境界が単一の分極方向をもつのか、それともドメイン高次元構造を持っているのかに着目をし、研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の故障などが多く、その修繕費など当初予定していなかった支出が続いたため、初年度に購入予定だった物品を購入できなくなってしまった。このため、次年度に割り当てた。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会への招待講演依頼などが来ているため、前年度あまった金額については旅費や参加費に充てる予定である。
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