研究課題/領域番号 |
15K17678
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山田 泰裕 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50532636)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | レーザー分光 / 遷移金属ダイカルコゲナイド |
研究実績の概要 |
理想的な二次元ナノ物質である遷移金属ダイカルコゲナイド半導体MX2単層膜は、光物性・電気物性・スピン物性が絡まり合い、バレートロニクスに代表される新物性発現の舞台として近年注目されている。しかしながら、空間閉じ込め効果に起因する強い多体キャリア間相互作用のため、励起子分子や荷電励起子の関与した光励起状態は極めて複雑になり、その全貌は未解明である。本研究では、MX2単層膜におけるユニークな光学特性の起源となる励起状態ダイナミクスを、異なる時間分解レーザー分光手法を組み合わせることで解明することを目的とした。特に、電気伝導とレーザー分光の融合させた新しい分光法を用い、光・電気伝導・スピンの相関に基づく物性の解明を目指して研究を進めている。 研究初年度においては、対象とするMoS2単層膜試料の作製および評価を行った。SiO2/Si基板上に剥離法によって作製されたMoS2薄膜を、発光およびラマン分光によって評価し、単層膜が形成されていることを確認した。また、試料を様々な手法で処理することによって励起状態の長寿命化や発光スペクトルの狭帯域化などの特性改善が実現できることを見出した。作製および評価した単層膜に対して微小電極を作製し、電気伝導測定による評価を行ったほか、光電流の温度依存性など基礎的なデータの収集を行った。 また、MoS2単層膜の励起状態ダイナミクスを解明する手法としてフェムト秒励起相関法による超高速光電流測定系の構築を行った。GaAs単結晶に対してこの手法を適用し、光励起状態の緩和ダイナミクスを光電流を用いて測定できることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単層膜試料の作製および評価は順調に進んでいる。特に、化学的処理によって単層膜の性質を改善する方法を得たことは、研究を進めていくうえで重要なステップとなった。また、レーザ分光によるフェムト秒時間分解測定系の開発も順調に進んだものの、使用しているフェムト秒レーザーに最近故障が相次いでいることから、今後は計画に支障が出る恐れがある。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は順調に進んでいる。今後も当初の計画通りに遂行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末頃に本研究で中核的な役割を果たすフェムト秒レーザー装置の故障が相次ぎ、修理が必要となる可能性があったため、一部光学部品の購入を見合わせて、レーザー故障時の修理対応が可能な態勢にしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
現時点では修理の必要には至っておらず、問題がなければ計画通りに必要な光学部品の購入に充てる。
|