研究課題
近年、電子が持つスピンの自由度に注目した研究が盛んにおこなわれている。その中でも、スピン流と呼ばれるスピンの偏った特殊な非平衡状態を利用したデバイスを開発しようとする研究や単一の電子スピンを量子コンピュータの量子ビットに利用しようとする研究が特に注目されている。これらのデバイスを実現するためには、電子スピンの多角的な理解が必要であると考え、本研究では電流のゆらぎに注目した研究を行ってきた。当該年度では、カーボンナノチューブの量子ドットに形成された近藤状態の磁場依存性についての論文を発表した。ここでは、微細加工技術によってカーボンナノチューブ内に電子を閉じ込めた量子ドットを作成し、低温環境下で電流ゆらぎ測定を行った。近藤状態とは、1つの電子のスピンの周りに沢山の電子が集まり、一体となって新しい状態を形成した状態である。これは代表的な量子多体現象であり、電子スピンの向きがゆらぐことが本質的な要因となっている。この近藤状態を研究する上でカーボンナノチューブは優れた系といえる。その理由は、通常の電子スピンに加えて軌道スピンの自由度があり、それらが加えた外部磁場に対して異なる応答をするためである。実際本研究では、この性質を利用して2つの異なる近藤状態を連続的に制御し、その変化に伴う量子的な対称性の変化を実測することに成功した。また、局在スピンが特異な規則性を持つ物質、Ag2CrO2を薄膜化し、その電気伝導を測定することで局在スピン状態の相転移を明らかにする研究に参加した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 8件) 備考 (1件)
AIP Advances
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