研究課題/領域番号 |
15K17681
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木山 治樹 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80749515)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己形成量子ドット / 電荷検出 |
研究実績の概要 |
平成27年度では、InAs薄膜加工量子ドット作製に向けた微細加工プロセス技術の確立と、InAs自己形成量子ドットにおける電荷検出に取り組んだ。まず微細加工プロセス技術の確立については、再現性の高い電子線リソグラフィ手順の確立に成功し、30nm以下の位置精度を得られるようになった。 InAs自己形成量子ドットにおける電荷検出については、ソース-ドレイン電極による遮蔽効果のために電荷検出信号が弱いことが予想されるため、まずソース-ドレイン電極幅を50nmほどに細くすることで遮蔽効果の低減を行った。量子ドット近傍のサイドゲート電極による電気化学ポテンシャル変調効率を測定し、この電極幅の影響を評価した。その結果、電極幅50nmの試料では、これまでの一般的な電極幅200nmの試料に対し、約2.5倍変調効率が高くなった。これは、ドットの伝導度が周囲の静電環境により敏感に応答することを意味し、より大きな電荷検出信号が得られることが期待される。また、大きなサイドゲート変調効率の応用として、トンネル結合の電気的制御を行った。その結果、トンネル結合がサイドゲート電圧に対して極大を示し、約2倍変調することに成功した。 次に、InAs自己形成量子ドットについて電荷検出実験を行った。ドット中心が約150nm離れた二つのドットに対してそれぞれソース-ドレイン電極およびゲート電極を作製し、一方を検出器、他方を被検出側として各ドットの伝導度を同時測定し、その変化を比較した。その結果、二つのドット伝導度の間で同期した伝導度変化が見られ、電荷検出を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピン検出を研究項目に挙げていたが、試料の不安定性のために電気的ポンプ-プローブ実験に至っていない。しかし、最も大きな問題であると予想していた電荷検出感度に関して、それを向上させる技術の開発に成功している。これは極めて重要な進展であり、次年度のスピン緩和の制御の達成が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
スピン検出では電気的ポンププローブ測定を多数回繰り返すため、安定した試料の動作が必須である。安定した試料の作製のために、新しく成長した自己形成量子ドット基板を用い、また電極蒸着前処理の改善を図る。 薄膜加工量子ドットについても引き続き作製に取り組むのと平行し、欠陥の少ない薄膜基板の構造を検討する。
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