研究課題
本年度は前年度に引き続き、これまでに構築した近赤外、可視~紫外領域の低温顕微分光測定装置を利用し、電荷秩序を示す有機伝導体θ系BEDT-TTF塩の分光測定を行った。また最終年度であることから、本研究課題においてこれまでに得た実験データの取りまとめ作業を行った。研究期間全体を通じて実施した実験の結果、有機伝導体の冷却・過熱過程において生じる電荷不均一のダイナミクスを、光学測定を通じて精密に議論することが可能となった。また、今後の研究展開として、高い伝導性を持つ有機高分子材料PEDOT系への進展を模索した。PEDOT系はBEDT-TTF系とほぼ同種の元素から構成される有機材料であり、正孔のドープによって1000 S/cm級の良好な電気伝導性が発現するが、低分子系と全く異なる材料としての特性(やわらかさ、加工容易性、原材料の水分散性)を併せ持つ物質系である。優れた材料特性から、すでに現在の有機電気光学デバイスの基幹材料となっている物質であるにもかかわらず、その基礎物性、特に微視的な電気伝導メカニズムは未だ良く判っていない。こうした系に対し、これまでに低分子の単結晶(BEDT-TTF系)から得られた基礎物理がどれほど適用可能なのか、また材料特性(柔軟性、伸縮性)を生かした物性制御などの新展開が生まれ得るのかは非常に興味深いテーマである。本研究で行った低温・電場下での分光測定技術を生かし、高分子系における電子状態・非線形応答を捉え、本課題にて捉えた低分子系の物理との比較研究へと展開したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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