研究課題
本研究は強相関電子系研究を希釈冷凍機温度より下の超低温度領域にまで拡張するため、(1)「ポメランチューク冷凍機開発による新しい超低温作成方法の開発」(2)「超低温領域で有効な電子系研究のための測定手法の開発」の2点を目的としている。今年度は以下のような進展があった。(1)ポメランチューク冷凍法のために必要な高純度ヘリウム3を生成するために必要なヘリウム3高純度化装置が完成した。この装置を用いて低純度のヘリウム3(~20%)を高純度化(~99.99%)することに成功した。ポメランチューク冷凍に必要なヘリウム3が揃ったため、テストセルを用いた試運転を次年度以降に行う予定である。(2)昨年度行った重い電子系超伝導体CeCoIn5の超低温量子振動測定から、希釈冷凍機温度以下の超低温領域で量子振動の振幅と周波数に変化が現れることを発見した。これは、CeCoIn5の超伝導相と隣接するなんらかの秩序状態が存在する可能性があることを示している。本年度はこの秩序相の詳細を明らかにするために超低温核磁気共鳴(NMR)測定を行った。超低温装置にNMR測定に必要な高周波同軸を導入し、高精度のNMR測定を超低温度まで行う事を可能にした。その結果、Co原子核におけるNMR測定からスピン―格子緩和時間(T1)の温度依存性を超低温度まで測定し、量子振動で異常のあった温度でT1の温度依存性に変化が現れることが分かった。この結果は磁気秩序相が現れたことを強く示唆するものであるが、その後の追加測定において試料依存性がある可能性が示された。磁気秩序相の存在を確かなものにするため、複数の試料における追加測定を次年度に引き続いて行う予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (3件)
Physical Review Letter
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 113 ページ: 8653-8657
10.1073/pnas.1524076113
Nature Communications
巻: 7 ページ: 12146
10.1038/ncomms12146
http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/issp_wms/DATA/OPTION/news20160719.pdf
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/research-news/thermal-conduction-bent-by-magnetic-field-found-in-insulators.html
http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/issp_wms/DATA/OPTION/release20170322.pdf