研究課題
本研究の目的は一次元フラストレート磁性体に理論的に期待される多様な量子相、特に飽和磁場近傍に期待される新しい電子状態であるスピン・ネマティック秩序相の詳細を実験的な観点から明らかにすることである。そのために1.新しい候補物質を探索する、2.有力な候補物質を選定する、3.その中でスピン・ネマティック秩序相を示すことが期待される候補物質を選定する、4.スピン・ネマティック秩序相を実証する、という4段階の研究計画を立てた。初年度においてはそのような有力な候補物質としてNaCuMoO4(OH)を発掘し、単結晶試料を用いた核磁気共鳴法(NMR)の測定などから微視的な観点からも有力な候補物質であることが実証された。最終年度ではスピン・ネマティック秩序相を実証する、という最終目標を達成するために強磁場NMRの実験をフランス・グルノーブルにて行った。1H核のNMRスペクトルの磁場依存性を詳細に調べたところ、飽和磁場近傍の24.3-24.5 Tの非常に狭い磁場領域において新しい磁気相が存在する確かな証拠を得ることができた。加えて23Na核の核磁気緩和率の磁場依存性から、飽和磁場よりも高磁場側では複数のマグノンが束縛対を形成していることが示唆された。以上の結果はスピン・ネマティック秩序が実在することを示す初めての積極的な証拠となる可能性があるという点において、フラストレート磁性の分野に新しい知見を与えることが期待される。その他にも、単結晶試料を用いた弾性中性子回折実験によってブラッグ反射を検出することに成功し、低磁場領域における磁気構造が明確になるなど大きな進展があった。
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