本研究課題においてはベクトルマグネットを用いた角度依存X線二色性分光装置の改良を行い、従来以上に精密な磁場角度依存X線磁気円二色性(XMCD)の実験を行うことができるようになった。また、この手法を用いて強磁性体中の電子軌道の占有状態を調べるための具体的な方法論を確立した。さらに、(La,Sr)MnO3やL10型FePtなど、スピントロニクス材料として期待される複数の強磁性体について角度依存XMCDの実験を行い、磁性薄膜の磁気異方性を議論するためには、従来考えられていた軌道磁気モーメントの異方性だけでなく、電子分布の異方性をも考慮に入れなければならないことを実験的に示した。
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