研究実績の概要 |
混合アニオン系化合物は、結晶構造内に複数種のアニオンを含む化合物であり、その配位環境に由来して、特異な結晶構造や電子状態を持つ場合がある。本研究課題では、混合アニオン化合物超伝導体BaTi2Pn2O (Pn = Sb, Bi)における超伝導の機構解明を目指し、元素置換効果および関連新物質の探索を行った。BaTi2Pn2Oは大気不安定であるためTcを除く物性値が報告されておらず、詳細な電子状態は未解明であった。しかし本研究において固溶系BaTi2(Sb1-xBix)2Oを作製し詳細な比熱測定を行い、BaTi2Pn2OにおけるTcと電子状態に関して以下に示す結果を得た。(1) Tcは0.4 ≦ x ≦ 0.55ではx < 0.4 の組成に比べ大幅に抑制され約1 Kとなるが、電子比熱係数γはほぼ変化しなかった。このことは、x = 0.5付近で見られるTcの抑制には競合相の存在など何らかの超伝導を阻害する要因が存在する可能性を示唆している。(2) x = 0.6付近でTcが約1 Kから約4 Kへと大幅に上昇する一方で、電子比熱係数γはほぼ半減した。これは電子状態がx = 0.6を境に急激に変化している可能性が高いことを意味する。以上の結果から、超伝導機構解明に向け重要な情報が得られた。BaTi2Sb2Oでは、超伝導と競合して秩序相が存在するが、その正体は解明されておらず、ネマティックCDWや軌道秩序相などが提案されている。この超伝導と競合する秩序相の正体を明らかにすることは超伝導の機構解明に重要な役割を果たすため、良質な単結晶試料を用いた低温結晶構造解析やNQR/NMR測定などが必要である。本研究ではBaTi2Sb2Oの単結晶試料を作製することに成功し、この秩序相の正体解明にも大きく前進した。また関連新物質としてオキシニクタイドやオキシカルコゲナイドの合成にも成功した。
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