研究課題/領域番号 |
15K17700
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三宅 厚志 東京大学, 物性研究所, 助教 (10397763)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ダイヤモンドアンビルセル / パルス磁場 / 高強度プラスチック |
研究実績の概要 |
前年度までに、高強度プラスチック樹脂性ダイヤモンドアンビルセル圧力装置を開発した。本年度は試料の最近接部分にあるガスケットの非金属化、微小試料への導電性ペーストによる端子付け、圧力セルへのセッティング方法の確立を試みた。前年度の経験を活かし、粒径の異なるアルミナ粉末、ダイヤモンド粉末をスタイキャストと混合し、アンビルで予備的に加圧したものをガスケットに使用することで、ガスケットを発熱のない非金属製に置き換えることができた。黒燐の圧力下量子振動測定を目指したセッティングを行った。試料空間が直径0.3 mm、高さ0.1 mmと微小なために試料を厚さ0.05 mm以下に劈開して、0.15 mm x 0.08 mm程度に切断した。その試料に電極を確実に取り付けるために、エポキシダイボンダーを使用した。ボンダーの真空ピンセットで金線をマニピュレートし、導電性ペーストを金線の先につけ、試料に電極付けを行った。市販の金線は直径0.01 mmと太いので、鏡面研磨加工したタングステンカーバイド性の治具と油圧プレスを用いて厚さ約0.002 mm程度まで圧延し、先端を細く切ることで電極として使用した。これにより試料に4端子取り付けることが可能になった。しかし、電極を付けた試料を圧力室に入れる段階、または加圧段階で断線し、圧力下での実験には至らなかった。電極を強固に取り付ける方法を模索している。今後は電気抵抗測定の方法を確立するとともに、トンネルダイオード発振回路を用いた表面インピーダンス測定の高感度化による量子振動測定の開発を行う。 また、本年度はいくつかの重い電子系化合物でメタ磁性転移を見出し、圧力効果の研究によりさらなる知見が得られることが期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガスケットの非金属化に取り組み、過去の報告例より簡便に作製する方法を開発した。液体圧力媒体の使用も可能である。研究室で所有しているエポキシダイボンダーの使用によって、長軸方向に0.15 mm程度までの微小試料へ4端子取り付けることができる様になった。しかし、圧力室への封入時、加圧過程で電極が断線するために、当初予定していた黒燐のパルス磁場、圧力中での測定に至らなかった。断線は導電性ペーストと試料の接着性が弱いことが考えられる。試料に影響を与えなくて接着性が強い導電性ペーストを模索している。電極を取り付けた微小試料の取り扱い、セッティングの方針は固まったので、測定まであと一歩のところまで来たと言える。また、使用性を向上させた圧力セルの開発も行っている。今までの使用で改善すべき点が明らかになったので、それらを踏まえて設計を見直して圧力セルを作製する。 ダイヤモンドアンビルセル圧力装置の微小な試料空間での電気抵抗測定は難易度が高いために、別の方法による量子振動測定の開発も必要であり、非接触で測定可能なトンネルダイオード発振回路を用いた表面インピーダンス測定を圧力中に適応する。常圧下では量子振動測定に成功しているが、配線、回路等の問題で圧力下での測定には至っていない。発振回路を改善し、非接触での圧力・パルス磁場中量子振動測定を目指す。トンネルダイオードの納入が遅れているが、届き次第、回路の作製に取り掛かる。
|
今後の研究の推進方策 |
試料を圧力セルにセッティングした直後は電気抵抗がうまく測れているが、加圧過程で導通を失うことが多い。加圧時には試料空間が変形したり、試料が試料空間内で移動することが考えられる。試料を圧力室に比べて十分に小さくすることで加圧時の断線を防ぐ。また、微小試料に強固に電極を取り付ける方法を検討する。導電性ペーストで電極を試料に強固に接着する必要があるが、電極間が短絡しない様に注意が必要である。過去の報告を参考に電極を取り付けた試料ごとエポキシで覆い固める方法も試す。電気抵抗測定を確立するとともに、トンネルダイオード発振回路を用いた圧力下表面インピーダンス測定法の開発も行う。常圧下での測定は可能であるが、圧力中では試料の信号が小さくなるために、回路をなるべく試料に近くに設置するなどの共振回路の最適化を行う。電気抵抗測定より定量性に欠けるが、高感度で電極取り付けが不要であるために微小単結晶の量子振動測定が可能となり、研究対象の幅が拡がることが期待できる。軸回転機構、高強度プラスチック製ダイヤモンドアンビルセルを用いた圧力・パルス磁場中量子振動測定により、黒燐の半金属相でのフェルミ面、重い電子系におけるフェルミ面、メタ磁性の圧力変化を明らかにすることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
微小試料への電極取り付けのためにXYZステージを導入予定だったが、研究室既存の装置で代替できたために、その予算執行が不要であった。また、トンネルダイオードが年度内に納入されなかったために予算執行が遅れた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度はトンネルダイオード発振回路、使用感を向上させた高強度プラスチック製ダイヤモンドアンビルセルの作製、ダイヤモンドアンビルの購入に予算を使用する。
|