本年度は困難であった導電性ペーストで電極を取り付けた長さ約0.2 mm程度の試料をDAC内の直径0.3 mm、高さ0.1 mm程度の圧力室に封入する方法を見直し、圧力下での電気抵抗測定を可能にした。具体的には試料周りの配線方法、ガスケットの作製方法を改善した。これらの手法を改善することで、非金属製DAC、パルス磁石を用いた黒燐の圧力誘起半金属相での磁気抵抗測定を行なった。黒燐の半導体ー半金属転移が起きる1.5 GPa付近で磁気抵抗測定を行い、量子振動を観測した。さらに、作製した圧力セルの一軸回転機構を用いて、磁場角度依存性の測定を行い、磁気抵抗、量子振動の振動数が磁場角度に対して系統的に変化することを見出した。しかし、加圧に伴い試料と電極との接触抵抗が大きくなり、感度の良い交流電気抵抗測定が困難になったため、電流、電圧端子を共通とする擬似的な交流4端子法での測定となった。それが主因であるかは不明であるが、過去の報告に比べて量子振動の振動数が小さく見積もられた。現在、フェルミ面の角度依存性を明らかにするために追試を行っている。 また、同じ結晶構造を持つ常磁性体CeNi2Ge2、YbNi2Ge2でメタ磁性的な挙動を観測した。これはCe、Yb系両者でメタ磁性を示す珍しい系である。それぞれ、反強磁性、強磁性量子臨界点近傍に位置していると考えられ、それらの違いが非線形磁化率の温度依存性に現れた。他にも希土類化合物、ウラン化合物においてもメタ磁性、量子振動を観測しており、今後の研究対象が拡がった。
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