研究課題/領域番号 |
15K17702
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山地 洋平 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00649428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / トポロジカル絶縁体 / イリジウム酸化物 / 磁性 / 磁壁 |
研究実績の概要 |
パイロクロア構造遷移金属酸化物を扱うための遷移金属の4d、5d軌道と酸素の2p軌道からなるハミルトニアンを導出し、平成27年度の研究として計画していた、d軌道の電子数によるパイロクロア構造遷移金属酸化物の持つトポロジカルな性質の変化を解析した。とくにオスミウム酸化物の性質とその磁性相における磁壁の分類が進んでおり、現在論文にまとめている。 平成28年度の計画に含まれていた、パイロクロア構造イリジウム酸化物の磁性相内の磁壁金属状態の電磁場下の線形応答現象と磁壁状態の実験における検出方法の解明について、予定よりも研究が進行し、前倒しに論文にまとめることが出来た。論文はすでにPhysical Review Bに投稿し、プレプリントサーバで公開している(Y. Yamaji and M. Imada, arXiv:1507.04153)。 加えて、本年度は研究対象を広げ、ハニカム構造イリジウム酸化物Na2IrO3を出発点にトポロジカルな電子状態を実現する物質設計指針についての研究も行い、成果をまとめた論文がPhysical Review Bに受理された。プレプリントサーバにおいても公開している(Y. Yamaji et al., arXiv:1601.05512)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究として計画していた、d軌道の電子数によるパイロクロア構造遷移金属酸化物の持つトポロジカルな性質の変化について進展があり、とくにオスミウム酸化物の性質とその磁性相における磁壁の分類が進んでおり、現在論文にまとめている。また、平成28年度の計画に含まれていた、パイロクロア構造イリジウム酸化物の磁性相内の磁壁金属状態の電磁場下の線形応答現象と磁壁状態の実験における検出方法の解明について、予定よりも研究が進行し、前倒しに論文にまとめることが出来た。論文はすでにPhysical Review Bに投稿し、プレプリントサーバで公開した(Y. Yamaji and M. Imada, arXiv:1507.04153)。加えて、本年度は研究対象を広げ、ハニカム構造イリジウム酸化物Na2IrO3を出発点にトポロジカルな電子状態を実現する物質設計指針についての研究も行い、成果をまとめた論文がPhysical Review Bに受理された。プレプリントサーバにおいても公開している(Y. Yamaji et al., arXiv:1601.05512)。 しかしながら、平成27年度の計画に含まれていた数値計算手法(クラスター摂動法)のパイロクロア構造遷移金属酸化物への適用は、数値計算用のアプリケーション開発の事情によって遅れてしまった。これは、筆者が代表者となって開発公開を行っているアプリケーションHΦにクラスター摂動法を組み込み公開に備える作業時間を確保するため、元来の計画を変更したことに起因する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、第一原理的電子状態計算と理論計算との比較による強相関トポロジカル物質の候補リスト作成と、パイロクロア構造遷移金属酸化物へのクラスター摂動法の適用を行う。一部の研究計画を前倒したことによる時間的余裕を、遅れているクラスター摂動法による物性解析に割くことで、当初の予定通りの成果創出を目指す。また、第一原理的電子状態計算との比較については、当初の計画通り、パイロクロア構造遷移金属酸化物の第一原理的電子状態計算の専門家である共同研究者の助けを借りながら進めており、順調に進むことが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付額が少なく、必要な計算機が平成27年度内の予算額では購入が出来なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の予算と合算し、必要な計算機の購入に充てる。
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