研究課題/領域番号 |
15K17703
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
綿貫 竜太 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (30396808)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチフェロイクス / スピンカイラリティ / 磁性 / 試料合成 |
研究実績の概要 |
磁性由来の強誘電性を示す『マルチフェロイック物質』の発現機構は複数知られておりその中でも特にスピンカレント機構が最もよく研究されている。一方、完全三角格子反強磁性体RbFe(MoO4)2 (RFMO)において、磁気転移に伴ってc軸方向に自発電気分極が現れることが確認され、申請者らが面内スピンカイラリティが強誘電性の主たる起源であることを実証した。しかし、その微視的な発現メカニズムは従来のスピンカレント機構では説明できないため重要な未解決課題として残されている。本研究では、新たな関連物質を創製してその磁性と強誘電性を調べることで、系統的に理解し、この微視的発現メカニズムを明らかにすることを目的とした。申請者は、候補物質として考えていたLiCrS2と岩手石Na2BaMn(PO4)2の単結晶育成を目指し、結晶育成に着手した。LiCrS2は3種類の合成法を考案し、管状炉にて焼成を試みた。そのうちの一つの手法により、黒色の目的物質の合成に成功した。しかし、得られたのは粉末試料であり単結晶の育成には未だ成功していない。得られたLiCrS2の粉末試料を用いてSQUID磁束計で磁化測定を行い、LiCrS2の基本的な磁性を初めて明らかにした。パルス磁場中での焦電法による誘電分極測定と、中性子回折実験によって磁性と強誘電性の相関を調べるには単結晶が必要であるため、今後も引き続き単結晶の育成を試みる。一方の岩手石は水熱合成を試みたが多結晶試料でさえ合成に成功していない。岩手石の合成の目途が立たないため、年度後半から申請時には挙げなかったBa3MnNb2O9も新たに合成に着手した。Ba3MnNb2O9は単結晶ではなく焼結体ではあったが、目的物質を得られたので、フローティングゾーン法による単結晶育成を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初考えていた2つの候補物質、LiCrS2と岩手石Na2BaMn(PO4)2のどちらも単結晶の育成に成功しておらず、単結晶を用いて行う予定であった物性測定の実験が行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
粉末多結晶試料の合成に成功しているLiCrS2については、パルス磁場中での焦電法による誘電分極測定によって磁性と強誘電性の相関を調べるには単結晶が必要であるため、今後も引き続きLiBrによるフラックス法により単結晶の育成を試みる。また、ブリッジマン法での単結晶育成にも着手する予定である。 一方、年度後半から申請時には挙げなかったBa3MnNb2O9も新たに合成に着手し、目的物質の焼結体を得ることができているため、フローティングゾーン法による単結晶育成を試みる予定である。 これらの得られた単結晶を用いて、本学のパルス強磁場施設で焦電法による誘電分極測定を行う計画である。 中性子回折実験は、単結晶の育成に成功しなければ中性子実験施設へのプロポーザルを行えないため、計画していた28年度内に実験を行うのはかなり難しい状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が遅れ気味であり、誘電分極測定を筆頭に物性測定実験が進んでおらず主に実験にかかる消耗品費の出費が抑えられてしまったため。ただし、試料合成実験は予定以上に時間とコストが掛かっており、総額で6万円強の繰越額に留まっている。
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次年度使用額の使用計画 |
単結晶試料の育成に注力し、育成に成功後は予定通り物性測定を行う。繰り越した予算は27年度に行えなかった実験を28年度内に行うことに使用する予定である。
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