研究実績の概要 |
三次元鉄ヒ化物Can(n+1)/2(Fe1-xPtx)(2+3n)Ptn(n-1)/2As(n+1)(n+2)/2 (n = 2 (3-1-8-6系), 3 (6-3-11-10系))の物質・物性開拓を展開し、研究範囲を周辺物質へと広げた。Pt/Pd置換を中心とした物質探索から、Ca1-xLaxFe1-yPdyAs2の組成を持つ2種類の新しい鉄ヒ化物を得ることに成功した。置換の影響のために、従来のX線回折法では構造を一意に同定できないという問題が生じ、構造解析の難度の高い物質ではあったが、KEK PFにおける放射光単結晶X線回折実験を駆使して、As吸収端近傍における原子散乱因子異常分散項の不連続な変化を利用して結晶構造を突き止めることに成功した。得られた構造は、申請者が中心となってこれまでに開発を行ってきた112型Ca1-xLaxFeAs2 (Tc = 34 K)の類縁構造であり、112型鉄ヒ化物が多様な類縁構造を持つ物質系であることを示す成果となった。また、両物質の電子状態が超伝導を示すCa1-xLaxFeAs2と似通っていることをXAFS測定から明らかにしており、さらなる物性開拓により高温超伝導の発現が期待される。 本年度は本研究で得られた成果を取りまとめ、論文報告することにも注力した。三次元鉄ヒ化物に関する成果は申請者を筆頭著者としてScientific Reports誌に報告し、新たに発見した112型鉄ヒ化物については申請者の指導する学生を筆頭著者としてInorganic Chemistry誌に論文報告を行っている。また、本研究の成果に関して、国際学会における招待講演(2017年3月)を行うなど、研究成果を積極的に普及するよう努めた。
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