研究実績の概要 |
本研究では、最近発見された新規層状BiS2系超伝導体の単結晶育成、基礎物性評価、STM測定による電子状態の観察を一貫して行うことにより、本系の物性を電子状態の観点から明らかにすることを目的とし、研究を行っている。本年度は、単結晶育成及び基礎物性評価を中心に行い、それらの研究と並行してSTMの測定の予備実験を行った。単結晶育成では、ブロック層のランタノイドイオンの異なるLn(O,F)BiS2(Ln=La, Ce, Pr, Nd)や、Biの一部をPbやSbで一部置換したLn(O,F)(Bi,A)S2(Ln=La, Nd A=Pb, Sb)、SをSeで全置換したLa(O,F)BiSe2の育成に成功している。これら試料の基礎物性測定から、Ln(O,F)BiS2は過去の報告と同様にフッ素置換により超伝導を示すことを確認した。また、Pb置換では超伝導転移温度が上昇し、一方でSb置換では超伝導を抑制することを新たに見出した。STMの予備実験ではCe(O,F)BiS2の測定を行い、F置換量の違いでその表面構造が劇的に変化することをすでに報告している。また、SをSeで全置換したLa(O,F)BiSe2のSTM測定も行っており、Nd(O,F)BiS2で見られていた特異な電子状態に類する表面電子状態の観測に成功している。これらの研究結果は、海外での招待講演やReview論文の出版により公表しており、着実に成果を得られている。
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