2012年に発見された層状BiS2系超伝導体の発現機構解明のため、単結晶試料を用いた輸送特性評価及びSTM測定による電子状態観察を行った。その結果、CeO0.3F0.7BiS2の単結晶表面では、Bi正方格子の対角方向へ伸びる背骨上の構造が発達することを見出した。また、LaO0.5F0.5BiSe2の単結晶表面では、同じく格子の対角方向に伸びる、格子の約5倍の超周期構造の観測に成功した。電荷供給層や伝導層のカルコゲン元素が異なる試料において特殊な秩序構造が発達することから、本物質の超伝導が何らかの秩序構造の近傍で発現することが示唆される。さらに、伝導層のBiの一部をPbに置換することにより、約8%近傍の狭いPb置換領域において超伝導特性が大きく向上することを発見した。その領域の置換量を持つ試料の格子定数cは大きく減少しており、c方向への格子の縮小が超伝導特性の向上と相関すると考えられる。これら発見は、BiS2系超伝導体の超伝導機構解明のための手がかりとなることが期待される。
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