研究課題/領域番号 |
15K17720
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 宗 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (40507836)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンタングルメント / 量子相転移 / トポロジカル相転移 / 量子ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本研究課題1年目となる本年度は、トポロジカル相転移を起こす一般化1次元クラスタイジング模型について、その量子相転移(トポロジカル相転移)及び量子相転移を横切るスイープダイナミクス下で生じる特異な現象を調査した。
1次元クラスタ模型と呼ばれる統計力学模型はこれまで可解模型、量子情報科学の文脈で精力的に研究されてきた。この模型は自由フェルミオン模型に変換できるため、厳密な解析が可能である。この模型の基底状態はクラスタ状態と呼ばれ、測定型量子計算のリソース状態の一つとして知られている。我々はこの1次元クラスタ模型に対し双対な相互作用を加え、更にイジング相互作用を加えた一般化1次元クラスタ模型を提案した。この模型には三つの相互作用が存在する。相互作用値を変えることにより量子相転移が生じる。我々はこの模型の基底状態相図を厳密な解析及び数値計算を用いて完成させた。
また相互作用スイープによる動的特性の探求は量子アニーリングや断熱量子計算の文脈から興味を集めている。特に相転移点を横切る相互作用スイープによる動的特性は、相転移点の特性を反映する。我々は異なるトポロジカル数を持つ二つの量子相の間のスイープダイナミクス及び、同じトポロジカル数を持つ二つの異なる量子相の間のスイープダイナミクスを検討した。その結果、トポロジカルブロッキング現象と呼ばれる、トポロジカル系に特有の動的現象を観測した。これは初期状態のトポロジカル特性を反映した特徴的な動的現象と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的として、量子情報科学における最重要概念であるエンタングルメント (量子もつれ) を元に、統計力学模型の性質を探求する枠組みの構築を掲げていた。本年度行った一般化1次元クラスタイジング模型は、今後より複雑な量子系に対してエンタングルメント特性を検討する上での雛形となる重要な統計力学模型である。また2年度以降実施する研究の準備計算を実行しており、当初掲げた研究計画を順調に進められる目処が立ちつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初掲げた計画通り、2015年度に検討した一般化1次元クラスタイジング模型を更に拡張した統計力学模型の基底状態の特性及び、ダイナミクスをエンタングルメントの観点から検討する。また他のタイプの量子系について、特に厳密な解析が可能な量子系や、それを拡張した量子系に対するエンタングルメント特性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
セミナー講演を行う予定が入り、予算作成時に計画していたアメリカ物理学会に参加しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究協力者との研究議論のために必要な旅費、及び研究協力者の出張経費に充てる予定である。
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