研究課題/領域番号 |
15K17723
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
下川 倫子 福岡工業大学, 工学部, 助教 (80554419)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重力不安定性 / 液滴 / 界面 / 渦輪 |
研究実績の概要 |
粘性流体中を沈降している液滴は、沈降過程で自発的に複数個の液滴に分裂する。分裂機構として、沈降する中で液滴は渦輪を形成し、形成された渦輪の不安定化によって分裂が促されることが報告されている。しかし、この渦輪の不安定化の起源は明らかになっていない。そこで、本年度は不安定化の起源に焦点を当てた実験を行った。 分裂過程の滴の変形過程を鉛直方向、水平方向からカメラで撮影した。動画の解析から、不安定化の波長を見積もった。滴の初期粒径を変化させた実験を行い、不安定化が起こる直前の滴(渦輪)の鉛直方向の厚みdcと不安定化波長の関係を調べた。得られた不安定化波長は滴(渦輪)の厚みdcとともに増加していた。 レイリーテーラー不安定性の数値計算結果と実験結果との比較を通して、液滴の分裂現象を促す不安定性の起源を議論する。レイリーテーラー不安定性とは、密度の小さな溶液の上に密度の大きな溶液の層がのっているとき、重力による不安定性に起因した擾乱が二流体界面で起こる現象のことを言う。本実験における渦輪の厚みdcは、レイリーテーラー不安定性での密度の大きな流体層の厚みと対応していると考えられる。そこで、密度の大きな流体層の厚みと溶液の粘性を考慮し、数値計算からレイリーテーラー不安定性の不安定化波長を見積もった。数値計算から得られた不安定化波長は実験で得られた渦輪の不安定化波長と一致していた。以上のことから、レイリーテーラー不安定性が液滴の分裂現象における不安定化の支配的要因であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験結果と重力不安定性の数値計算結果との比較を通して、レイリーテーラー不安定性が液滴の分裂現象を促す支配的要因であることが明らかになった。本研究結果は、国際学会DDEU及び研究会「非線形現象の捉え方」で発表し、論文を投稿中である。以上のことから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は液滴の分裂を促す渦輪の不安定性の起源を実験で示した。今後は液滴の分裂個数の決定要因に着目する。液滴の初期粒径、溶液の粘性、二流体の密度差を変化させた実験で、分裂個数の頻度分布をそれぞれ調べる。得られた実験結果から分裂個数を決定する物理量を導き、その決定要因を議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿料が大学研究費の経費で賄えたことや学内の特別旅費の補助を受けることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
世話人をしている研究会「第二回非線形現象の捉え方」における招待講演者への謝金、旅費、経費として使用予定である。研究会では本研究課題に関連する研究者に講演を依頼し、研究の発展につなげる。
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