界面現象に関する様々な研究が従来なされてきたが、その多くが平衡系の範囲内、もしくはその延長線上でのものである。しかし、現実の系のほとんどは時間的にも空間的にも不均一な非平衡系であることから、平衡系の枠組みで非平衡系での界面現象の理解は難しい。その性質を調べることは物理的のみならず、工学的にも重要な課題である。我々は時間に対して非定常な系である液滴の分裂現象に関する実験的研究を行った。粘性流体中を沈降している液滴は、沈降過程で複数個の液滴に自発的に分裂する。昨年度は分裂個数<m>は液滴の半径、二流体の粘度、二流体の密度差を含む無次元量Gで整理できることを示した。しかし、この結果は液滴と液滴が沈降する粘性流体の粘度が同じである場合に限定されている。そこで、最終年度は二流体の粘度差がある場合に着目し、実験を行った。主な実験結果は以下に示す;(1)粘度差がない場合と同様、<m>はGで整理できる、(2)<m>=2から<m>=3に遷移する転移点はGcは粘度差に依存し、線形増加していた、(3)分裂を促す界面での不安定化波長は粘度差がない場合よりも大きく、二流体の粘度差を考慮した数値計算結果とよく一致していた。期間を通じた研究を通して、時間的空間的に変化する液滴界面の変形現象を促す界面不安定の起源が重力不安定性であること、また重力による滴の駆動力と粘性散逸の競合が分裂モードの決定において重要であることが分かり、今後の研究へつながる成果を得たと考える。
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