研究課題/領域番号 |
15K17724
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
越智 正之 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10734353)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 強相関電子系 / 計算手法開発 / 波動関数理論 |
研究実績の概要 |
第一年度の成果として、まず平面波基底によってTC法の一電子自己無撞着方程式を解く手法を確立し、それを計算コードに実装した。従来は、密度汎関数理論において求めた一電子軌道を基底として用いていたが、本研究計画における適用対象である強相関電子系においては、密度汎関数理論の一電子軌道とTC法のそれとの隔離が大きくなるために、そのような基底関数の扱いは効率的ではない。そこで固体計算において非常に汎用性の高い平面波基底を用いるような改良を行ったものである。TC法では非エルミートの対角化問題を解く必要があるため、Block Davidson法に基づいたアルゴリズムの開発を行った。 またその平面波基底を用いて計算が効率化されたことを受け、擬ポテンシャルがTC法のバンド構造にもたらす誤差の解析を行った。ここで擬ポテンシャルは固体の内殻電子を近似的に取り扱う手法である。その結果、価電子の深い準位(例えば固体シリコンの3sバンド)の位置は内殻電子の露な取り扱いにより改善されることがわかった。一方でエネルギー準位の高いバンド構造は大きな変化を受けないことがわかった。これらはTC法に限らず、他の高精度波動関数理論においても重要な知見となるものである。 さらに現在、このように改良されたコードを強相関電子系に適用している。適用対象は当初研究計画の通りいくつかの遷移金属酸化物であり、計算は順調に進んでいる。大きな計算を行うための並列化法の改善も準備として行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、遷移金属化合物にTC法を適用することが出来ている。またそのために必要な手法開発も合わせて行うことが出来て、他の波動関数理論にとっても重要な知見を得ることが出来た。強相関電子系への適用において、計算時間が当初想定していたよりは長く掛かっているため計算はまだ中途段階であるが、精度改善はラフな計算から既に確かめられており、総合的にみておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も強相関電子系への適用を進め、そこで得られたバンド構造の精度を分析することで計算手法の改善を試みていく。またそのために必要な手法開発もあわせて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会および研究会における研究発表の機会が当初想定よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会および研究会における研究発表のための旅費として用いる予定である。
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