研究課題/領域番号 |
15K17727
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西田 祐介 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80704288)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 流体力学 / 散乱長 / 体積粘性 / 冷却原子 |
研究実績の概要 |
本年度は、時間的・空間的に変化する散乱長を伴う流体力学についての研究を主に遂行した。流体力学は、熱力学的平衡状態から外れた強相関系の低エネルギー物理を記述できる強力な方法である。特に本研究では、時間的・空間的に変化する散乱長を伴う非相対論的な粒子からなる系について、常流動相と超流動相の双方で流体方程式を構築した。そのためにまず、粒子数、運動量、エネルギーに関する連続の方程式を演算子間の恒等式として導き、特にストレステンソルのトレースがハミルトニアンとコンタクトを用いて書けることを示した。これらの恒等式を用いて構成方程式を構築し、熱力学の第二法則と整合するように散逸項を決定した。その結果、散乱長は流体の膨張収縮を表すように、系の体積粘性(超流動相においてはζ_2)を伴って構成方程式に現れることを明らかにした。このことは散乱長が系のハミルトニアンに内在する唯一のスケールであり、流体の膨張収縮はこのスケールと相対して生じることから自然に理解できる。同様の結果は、時間的・空間的に変化する散乱長を仮想的な外場と見なして、共形不変性を満たすように体積粘性項を構築することによっても得ることができる。また、静止した一様系に対して散乱長を時間的に変化させると、体積粘性に比例してエントロピー生成が生じることも明らかにした。この事実は、冷却原子実験において系の体積粘性を測定するために有用となり得るものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では想定していなかった、流体力学、散乱長、体積粘性の間の関連性を新たに見出したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって新たに見出だした時間的・空間的に変化する散乱長と体積粘性の関連性を用いて、冷却原子実験において系の体積粘性を測定することができるよう研究をさらに推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も研究に新たな進展があり、その研究を推進することとその成果をまとめた論文を執筆することに時間を費やした。その結果、計画時に想定していた学会発表のための出張などをあまり行わなかったため、旅費において未使用額が生じた。 本年度の研究によって新たに見出だした体積粘性の新たな測定方法を冷却原子実験において実行できるよう、積極的に発表を行うために主に旅費として使用する計画である。
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