研究課題/領域番号 |
15K17730
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
武田 俊太郎 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 特任助教 (80737304)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 冷却原子 / ボース・アインシュタイン凝縮体 / リュードベリ原子 / レーザー冷却 / ポンプ・プローブ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、ルビジウム原子のボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)を光パルスでRydberg状態へ励起するという手法を用いて、原子間に強い双極子-双極子相互作用を持つBECを生成する。このBECにおける電子の非平衡ダイナミクスの実時間測定を目指すと共に、励起する光パルスの調整により相互作用の強さや異方性が制御できることを示す。これらのツールを用いて、強く相互作用し合う量子縮退系における未知の量子相や量子現象を探索し、量子縮退系のより深い理解へとつなげることを目的とする。平成27年度の研究実績は以下の通りである。
1、光双極子トラップを用いた蒸発冷却(全光学的手法)により、所属研究グループとして初めてルビジウム原子のBECを生成することに成功した。初のBEC観測から徐々に実験系及び生成手法を改善し、最終的に原子数約4万個で純度が100%に近いBECを安定して生成できるに至った。原子数・純度ともに、本研究で利用するに十分な質と言える。この結果を、2015年6月のGordon Research Conference: Atomic Physicsにおけるポスター発表、及び2016年3月の日本物理学会第71回年次大会における口頭発表にて報告した。
2、BEC生成用の真空チャンバー内に、BECをRydberg状態へと励起した後にイオン化して検出するために用いる電極及びマイクロチャネルプレートを新たに導入した。予備実験として、磁気光学トラップ中の原子集団を光パルスによりRydberg状態へと励起した上で、イオン化して検出を行い、検出系が正しく動作することを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、制御性が高く強い相互作用を持つBECを生成すること、及びそのBECにおける電子の非平衡ダイナミクスを観測することである。平成27年度は、この目的で用いるルビジウム原子のBEC生成成功に加え、BECに相互作用を誘起しダイナミクスを観測するために用いるRydberg状態への励起及び検出システムの導入と動作確認が完了した。交付申請書記載の研究計画通りに順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成27年度に開発したシステムを組み合わせ、BECを光パルスによりRydberg状態へと励起する実験へと移行する。電子状態の時間発展を観測することで、BEC内部での相互作用が電子のエネルギー準位やデコヒーレンス過程に及ぼす影響を調べる。また、励起光パルスの制御により、相互作用が変化することを確認することで、制御性が高く応用可能性の高い物理系であることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
真空チャンバーのデザインを当初の計画から一部変更した関係で、予定していたチャンバー間の原子の輸送に必要な実験機器を購入する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は本格的なデータ測定を開始する。この測定には比較的長い時間を要することが想定される。そこで、平成28年度の予算は、測定系の準備と実験系の長時間安定性向上のために使用する。ビームのポインティング安定化機構のためのピエゾ付ミラーマウント及びコントローラ、またデータ取得時に用いるデジタルオシロスコープの購入などに充てる予定である。
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