研究課題
量子光学分野のみならず,量子暗号通信・微弱光通信・蛍光測定等の様々な分野において高性能な光子検出器に関するニーズが高まっており,光子を高効率で補足し検出することが求められている.一方、超伝導量子ビットとマイクロ波共振器を結合させた回路量子電磁力学(回路QED)の研究分野では、超伝導量子ビットの励起エネルギーに近いマイクロ波(数GHz~数十GHz)が使用されている.回路QED分野の発展とともに,マイクロ波光子検出のニーズが高まっているが,マイクロ波光子のエネルギーは通信波長帯の光子のそれと比較して実に4~5桁も小さく,その検出は困難を極めている.本研究では、回路QED系において、量子ビットを適切なパワーと周波数のマイクロ波で駆動することにより、人工Λ型三準位系(人工Λ型原子)を実装し、この系において見られる入射単一マイクロ波光子による系の決定論的スイッチングを応用するという独自の手法を用いて、単一マイクロ波光子の高効率検出を試みた。人工Λ型三準位系に入射された共鳴マイクロ波光子は、系の状態を基底状態から励起状態を経て準基底状態である量子ビットの励起状態へ決定論的にスイッチさせる。従って、人工Λ型三準位系へマイクロ波光子を入射した後、量子ビットの状態が励起状態であれば、マイクロ波光子を検出したことになる。実験では、ガウシアンパルスによって整形された弱コヒーレントマイクロ波を入射マイクロ波信号として用い、この信号による量子ビットの励起確率を測定した。測定結果を基に単一マイクロ波光子検出効率を求めたところ、66%という世界最高感度を得た。このマイクロ波光子の検出手法は、光子が検出器に入射されるタイミングを予め把握しておかなければならない「タイムゲート方式」とよばれるものであるが、デバイスレイアウトの工夫により、この動作原理によらない実時間でのマイクロ波光子検出にも成功しつつある。
研究所ホームページに於ける、研究成果のプレスリリース発表
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Physical Review Letters
巻: 117 ページ: 020502
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.020502
Nature Communications
巻: 7 ページ: 12303-1/12303-7
10.1038/ncomms12303
巻: 117 ページ: 173601
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.173601
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160725_1/
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160725_1/digest/