本年度は、量子テレポートを用いた量子計測についての研究を行った。古典計測により磁場Bの値を検出する際に、計測時間Tの時間をかけると感度はTの平方根で向上することが知られている。一方で、量子ビットを用いた計測では原理的には、計測時間Tの時間をかけると感度はTに比例して向上する。スケールが良いために、量子ビットを用いると原理的には古典センサよりも桁違いに感度の良い磁場センサが構築できる。しかしながら、量子ビットは磁場に対して敏感であるが、ノイズに対しても脆弱であることが知られている。そのため、ノイズの影響のもとで、古典限界を超える感度の量子センサが実現できるかどうかは自明ではない。特に位相緩和と呼ばれるノイズが存在する場合は、量子センサで古典限界を超える感度の磁場センサを出すことは難しいと考えられてきた。そこで我々は、量子ビットに対して量子テレポートを使うことで位相緩和の影響を抑制して、磁場センサの感度を向上させるスキームを開発した。このスキームでは、位相緩和の影響下でも、古典限界を超えて、測定時間Tに感度が比例する「量子限界」を達成できる。これは現実的な状況でも高感度な量子センサを実現できる可能性を示しており、画期的な成果である。さらにエンタングルメントを用いた場合は、さらなる感度向上が見込める。L個の量子ビットを用いた場合は、古典センサの場合はLの平方根だけ感度が上昇する。我々は量子テレポートを用いると、位相緩和の影響の下でも、エンタングルメントセンサの場合はL^{3/4}だけ感度が向上することを示した。
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