昨年度までに、多くのガラス形成物質に対しガンマ線準弾性散乱測定法を用いて原子・分子ダイナミクスの情報を有するスペクトルを取得してきた。本年度は、これまでに得られたスペクトルに対して新しい解析方法を構築することを試み、確立することができた。具体的には、より精度が高く迅速に簡便に解析できるプログラムを本科研費で購入したコンピューターにより開発した。本課題研究で提案されたより高精度のスペクトルの解析式を用いることにより、これまでの手法にくらべて極めて高い精度でスペクトルを計算し実験スペクトルをフィッティングできるようになった。さらに解析プログラムそのもの刷新により、これまで数十秒かかっていたスペクトルのフィッティングが数秒でフィッティング可能となり極めて迅速な解析が可能となった。加えて、複数のスペクトルをワンクリックで解析できるようになり、本手法に不慣れな共同研究者も容易に多くのスペクトルを迅速に解析できるようになった。また、中間散乱関数と呼ばれる原子・分子スケールの構造の時間緩和関数を可視化することもできるようになった。 このような新解析プログラムにより、本研究課題で研究された様々なガラス形成物質の実験スペクトルを解析することで、高精度の構造ダイナミクスの実験結果を得ることができた。加えて、それらの結果が既存の研究成果と整合することを確認することで実験と解析の妥当性を検証した。本研究の結果得られた新たな成果は論文投稿に向けて準備中である。
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