研究課題/領域番号 |
15K17737
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藪中 俊介 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (60749852)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多重臨界点 / フラストレート磁性体 / 繰り込み |
研究実績の概要 |
前年度から行っていたフラストレート磁性体を記述すると考えられるO(N)*O(2)模型の有効ポテンシャルの多項式展開によらない計算のまとめを行った。LPA'近似の範囲で数値的に完全に収束した解をより従来より低次元(d=2.2)まで得ることができ、その結果を論文を投稿した。 その中で、O(N)*O(2)模型の解析において多重臨界点が3次元近傍で消滅するという予想外の結果を得たので、Large-N解析やいわゆるカレント項も含めた近似の精度の向上、消滅のダイナミクスの詳細な解析などの様々な検討を行った。 その結果多重臨界点は、2次相転移を記述する固定点と異なったLarge-Nに関するスケーリングを持つ事を示した。またLarge-N極限では、ちょうどd=3で消滅する事も示した。さらに、多重臨界点の消滅するパラメータ付近で他の固定点を探した結果従来見つかっていない3重臨界点を発見した。その3重臨界点を次元を上げながら追跡しさらに、別の多重臨界点と衝突する事も示した。最後の多重臨界点はd=2まで存在する証拠を得つつ有り、この結果により、多重臨界点のダイナミクスの2<d<4にわたる統一的な描像を得たものと考えている。 また非平衡系に関しても有効ポテンシャルと秩序変数分布の間の関係に関し考察を行ったもののまだ具体的な系に関しての適用は時間的に出来ておらず、次年度以降行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年は、O(N)*O(2)模型の解析において多重臨界点が3次元近傍で消滅するという予想外の結果を得、Large-N解析や近似の精度の向上、消滅のダイナミクスの詳細な解析などの様々な検討を行い、これまで見つかっていなかった2つの他の多重臨界点を発見し、2次元から4次元にわたる、固定点の統一的な理解を得つつある。この結果は、このモデルに対する従来の描像を覆すもので、場の理論の他のモデルにおいても類似の現象が有る可能性があると考えている。 しかしながら、非平衡系の計算はまだ進んでおらず来年度以降の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、多重臨界点のダイナミクスを詳しく調べ他の模型でも類似の現象を探索する。 また非平衡系では、有効ポテンシャルと秩序変数分布を結びつける計算を開始したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、本研究計画に関する渡航が先方の事情により1ヶ月半程度にとどまった結果、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の研究打ち合わせ、学会出張に用いる予定である。
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