近年は南極・グリーンランドともに氷床上での地震観測が行われているが、理論的に氷床が観測波形に与える影響を調べた研究はなかった.我々は局地的な地震波伝播を効率良くモデリングできる数値計算手法を開発し,現実的な氷床モデルを用いた理論地震波形計算を行った.その結果,氷床内部にS波がトラップされて形成される地震波相「Le波」の存在が理論的に予測された.また氷床底部に感度を持つ表面波を観測することで,その位相速度の季節・経年変化のパターンが,氷床底部の温度状態(凍結か融解か)の違いによって逆転する可能性を見出した.この結果は,氷床底部からの氷の融解を直接的にモニタリングできる可能性を秘めており興味深い.
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