研究課題/領域番号 |
15K17744
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河合 研志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20432007)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 波形インバージョン / 最下部マントル / スラブ / 上昇流 |
研究実績の概要 |
マントルの最下部数100kmの領域(D”領域)はマントル対流の熱境界領域と考えられており、構成物質のソリダスと地温勾配が近接していることから、化学分化が起こり温度や化学組成の3次元不均質が存在すると予想されていた。特に沈み込み帯下のD”領域では、沈みこんだスラブと周囲のマントル物質が相互作用して、温度や物質の流動に擾乱を生じる可能性があるため、この領域の地震波速度構造を推定することは地球内部のダイナミクスを探る上で重要な手がかりとなる。 本研究では、代表的な沈み込み領域である北太平洋下のマントル最下部400 kmの構造を推定対象として詳細な構造推定を行った。地震波のtransverse成分のうち、S・ScS及びその間に到達するフェーズを含むデータに、局所的3次元構造推定のための波形インバージョン法(Kawai et al. 2014, GJI)を適用して、北太平洋下のマントル最下部400 kmの3次元S波速度構造を推定した。 その結果、(A) 核-マントル境界(CMB)から約200 km上の領域には水平方向に広がる高速度領域、(B) CMB直上には鉛直方向に50~100 kmの強い低速度領域、さらに(C) 低速度領域(B)から少なくとも鉛直方向に400 km続く低速度構造が推定した。速度異常が温度異常のみに起因すると仮定すると、高速度(A)及び低速度(B)領域はそれぞれ沈み込んだスラブ及び、スラブのブランケット効果によってその下で発達した熱境界層領域と考えられます。そして、鉛直方向に連なる低速度構造(C)を、上昇「受動的プルーム」がスラブの沈み込みによってに発生したものと解釈した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究は順調に進んでいるが、平成28年8月、震源パラメータが3次元S波速度構造モデル推定に与える影響を実際に構造推定に用いたデータセットよりも小さなデータセットで見積もった結果、当初の予想に反し、得られるモデルはあまり影響がないが、理論波形と観測波形の残差が大幅に改善することがわかった。研究遂行上、実際に構造推定に用いるデータセットを用いて、震源パラメータが与える影響を見積もることが不可欠であることから、追加計算をする必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は局所的な構造推定に用いる周波数帯に適した震源パラメータを用いて3次元S波速度構造モデル推定を行う。震源と構造の影響を最大限分離して推定可能であるため、大幅な解像度の改善が見込まれる。 また、本研究で開発した手法をマントル遷移層や最外核といった地球内部の他の地域に適用することにより、地球内部構造および地球内部ダイナミクスの理解が進むと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年8月、震源パラメータが3次元S波速度構造モデル推定に与える影響を実際に構造推定に用いたデータセットよりも小さなデータセットで見積もった結果、当初の予想に反し、得られるモデルはあまり影響がないが、理論波形と観測波形の残差が大幅に改善することがわかった(山谷ら、地震学会、2016)。研究遂行上、実際に構造推定に用いるデータセットを用いて、震源パラメータが与える影響を見積もることが不可欠であることから、追加計算をする必要が生じ研究に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
データの蓄積のためのストレージの購入、大型計算機の使用量、学会発表のための旅費、および論文出版の印刷費に用いる。
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