研究課題
平成27年度は,主に(1)浅部低周波微動の震源を陸上観測点から精度良く求めるための解析システムの構築と,(2)過去の活動履歴調査のための陸上連続地震波形データの収集を行った.(1)イベント検出および相対震源決定方法として,いくつかの低周波微動の波形をテンプレートとした matched filter technique の適用を当初考えていたが,想定以上に適用が難しいことが分かったため,検出方法については通常の地震と同様のSTA/LTA比を用いた方法に,相対震源決定についてはエンベロープ相関法による観測点間の走時差の観測網内の相関を取る方法に方針を切り替えることとした.相対震源決定で用いるマスターイベントとして,2013年の海底地震観測で精度の高い震央位置が得られているイベントの,陸上観測点における観測点間の走時差のテンプレートを作成した.また,別のプロジェクトで海底地震観測が2014年と2015年に行われており,この間に発生した浅部低周波微動についても現在震源決定を行いつつ,陸上観測点における走時差データのテンプレートを作成しているところである.(2)陸上連続地震波形データの収集については,九州大学に8mmテープに記録され保存されていた1996年~1999年のデータについて再生が完了した.鹿児島大学に保存されているデータについても1993年~1996年途中までのデータの収集が完了した.主に2000年以降のデータについては,超低周波地震活動が活発であった時期については波形の収集が完了しているが,連続波形データを東京大学地震研究所のサーバーで利用できる仕組みが構築されつつ有り,今後の状況を見つつ利用を検討中である.
4: 遅れている
解析のシステム構築が予想以上にうまくいかず,全体の進捗に遅れを生じさせている.特に,震源決定を行う方法について方針を変更したため,システム構築が次年度にずれ込む見込みとなった.一方で,相対震源決定に用いるマスターイベントについてはテンプレートの作成が進んでおり,システム構築がある程度進めば解析には入ることができる状態である.また,1996年前後の地震波形データについて収集が概ね完了しており,本研究で注目する1996年に発生した日向灘の地震前後の微動活動を把握するための下準備は完了しつつある.
平成28年度は,遅れているシステム構築を完了させ,浅部低周波微動のカタログ作成を進めることを優先する.作成したカタログを元に,活動の範囲や移動特性(方向や速度),周期性などを調査し,長期にわたり普遍的な特徴とそうではない特徴を明らかにする.また,深部低周波微動に見られる特徴との比較を行い,類似点・非類時点を整理する.地震波形データについて,2000年以降のデータについては東京大学地震研究所において連続波形データを利用するサーバーが近々利用できる見込みであるため,個別に波形を収集するのではなく,このサーバーを利用することで,データ収集にかかる時間を解析等の時間に回し,遅れを取り戻したい.
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Science
巻: 348 ページ: 676-679
doi:10.1126/science.aaa4242