研究課題
平成29年度は,前年度に開発した低周波イベント自動識別の改良を実施した.前年度に用いていた基準となるパラメータ項目が多く,やや煩雑であったため,低周波微動帯域のエンベロープ波形と通常の地震の帯域のエンベロープ波形の振幅比,ノイズレベルと低周波微動帯域の比,ノイズレベルと通常の地震の帯域の比の3つを持ちいる方法に改めた.地震の誤検出の問題は,低周波微動の活動様式が通常の地震に比べ連続的に発生することから,イベント検知の前後でイベントが連続して検知されているかどうかを判断するアルゴリズムを組み込んだ.この手法を海底地震観測データに適用し,南海トラフ沿いの日向灘から南西諸島における浅部低周波微動活動履歴を2014年からの3年に渡って明らかにすることができた.その結果,南海トラフから琉球海溝に沿って活動度が変化しており,北に位置する日向灘ほど活動頻度が低く,南の南西諸島にいくほど高くなる.一方で,エピソードあたりの活動度は日向灘は高い(バースト的),南西諸島は低い(定常的)傾向にあることがわかった.陸上の観測データに対する適用については,相対震源決定は使用できる観測点の配置が偏っていることなどもあり,現時点では想定していたほど精度良く求めることが実現できておらず,今後の課題である.一方で,イベント検知方法の確立は概ね実用できる段階にあり,データが欠落した際の処理を考える必要があることを除いて,準リアルタイムでの適用には目処が付いた.過去のイベント履歴解明の目標は,過去データの連続データ取得が難しくなったことで一部に限られしまったが,低周波微動の自動検出による活動の時間変化については陸上データだけでなく海底地震計データに適用にも応用できることが示された.
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Geophysical Research Letters
巻: 44 ページ: 9699~9706
10.1002/2017GL074060