研究課題/領域番号 |
15K17749
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
風間 卓仁 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20700363)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 重力 / 火山 / マグマ / 桜島 / 阿蘇 / 相対重力計 / 地殻変動 / 陸水 |
研究実績の概要 |
本研究は相対重力計を火山地域に複数設置し、時空間的に高解像度な重力連続観測を実施する。その上で、火山活動に伴う(とりわけ短周期の)重力変化を検出し、火山噴火の直前直後における火山内部のマグマ質量移動プロセスを解明する。 研究初年度に当たる平成27年度には、まず桜島火山(鹿児島県)の有村観測坑道局舎にScintrex社製相対重力計CG-3Mを設置し、1分間隔の重力連続測定を実施した。観測状況の監視に当たっては、インターネット経由でデータ収録用PCを常時確認し、約3ヶ月に1回現地を訪問して重力計本体のメンテナンスを実施した。本期間中、桜島では2015年8月15日に急激な膨張現象が発生したが、この際に本研究の相対重力計では-5.8マイクロガルの重力変化、および11.5秒角の山上がりの傾斜変化が観測された。また、桜島昭和火口直下の海抜下1.2kmに123万立方メートルの膨張ソースを仮定することで、この重力・傾斜変動を説明可能であることが分かった。 一方、阿蘇火山(熊本県)では、2015年9月、2015年11月、および2016年3月の計3回、Scintrex社製相対重力計CG5を用いたキャンペーン重力測定を実施した。これまでは、阿蘇第一火口の重力値は両振幅90マイクロガル程度で年周変動することが分かっていたが、2014年以降は年周変動の振幅が最大でも30マイクロガル程度に小さくなっていることが分かった。これは2014年後半以降に阿蘇火山の火山活動が活発になった影響で、山頂直下の熱水質量が失われたため、と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度においては、2015年8月15日の桜島膨張イベントに際して有意な重力・傾斜変動を検出した。そもそも相対重力計の観測精度は約10マイクロガルと言われてきたが、本研究では1分間隔の相対重力連続観測を行うことによって、10マイクロガルよりも小さな重力変化を検出することに成功したのである。 一方阿蘇火山では、火山活動の静穏期と活発期とでは重力年周変動の振幅が異なるということを発見し、かつ振幅変化の理由として火山直下の熱水質量の変動が示唆された。そもそも陸水変動は火山起源の重力変化を覆い隠すノイズ源であったが、阿蘇火山では火山活動と陸水の相互作用が本研究の重力観測によって明らかになりつつある。 このように、本研究の初年度にもかかわらず、平成27年度には重力観測を用いた火山質量移動プロセスの解明が着実に進展している。このことを鑑みた上で、現在までの研究進捗状況を「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
桜島火山の研究に関しては、2015年8月15日の重力・傾斜変動の物理プロセスをより詳細に議論する必要がある。というのも、本研究では球状圧力源によって重力・傾斜変動を説明したが、国土地理院の地殻変動データ解析によると、ダイク状圧力源の膨張がこのイベントに強く関わっていると考えられるのである。そこで今後の本研究では、GNSSやInSARといった地殻変動データを活用して圧力源の位置・形状・膨張プロセスをより詳細に議論する予定である。 一方阿蘇火山では、今後も3-4ヶ月に1度の頻度でキャンペーン重力測定を実施し、火口直下の熱水質量変動プロセスを明確化する。さらには、火口近くの観測小屋にて相対重力計CG5による重力連続観測を実施し、より短い時間スケールでの質量移動プロセスの解明につなげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、本研究は1つの火山に複数の相対重力計を設置する予定であった。しかしながら、各研究機関から複数の重力計を入手・借用することに難航したため、当初の計画を実現できなかった。この影響で、複数の重力計を設置するために必要な物品の購入代を当初の予想よりも使用しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
各研究機関との調整により、次年度には複数の相対重力計を借用し、各火山に複数設置することが可能となった。そこで本研究では、各火山に重力計を設置するための旅費として、次年度使用額を使用する予定である。この他、翌年度分として請求した助成金については、重力計設置・メンテナンスに関わる物品購入や出張旅費、および研究成果を学会で発表するための出張旅費に充てる予定である。
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