研究実績の概要 |
【目的】本研究では相対重力計を火山地域に複数設置し、時空間的に高分解能な重力観測を実施する。その上で、火山活動に伴う重力変化を検出し、火山活動前後における火山内部のマグマ質量移動プロセスを解明する。 【桜島における相対重力連続観測】本研究では桜島火山の火口南部約2kmに位置する有村観測坑道局舎にて相対重力値を1分間隔で連続観測してきた。その結果、2015年8月15日の桜島急膨張イベントに際し-5.86マイクロガルという微小な重力変化を検出することに成功した。この重力減少はダイク貫入に伴う地殻隆起や火山内部の密度減少を反映していると考えられる。また、2018年度には桜島火山の火口東部約3kmに位置する黒神観測室にて有村と同様の相対重力連続観測を開始した。有村および黒神における連続観測は2018年度末時点で問題なく継続しており、将来2015年8月と同様のイベントが発生した際には多点における重力変化が詳細に得られると期待される。 【各火山における相対重力繰り返し測定】本研究では火山内部における長期スケールの質量変動を捉えるために、桜島火山および阿蘇火山において相対重力繰り返し測定を年数回実施してきた。2018年度には桜島火山で5, 8, 9, 10, 1, 2月に、阿蘇火山で5, 8, 11月に相対重力繰り返し測定を実施した。その結果、桜島火山では火口近傍における重力上昇が2000年代~2010年代にかけて継続していることが分かった。この重力上昇は桜島火山の火口直下やや深部における質量増加を反映していると考えられる。また、2018年度には新たに箱根火山で7, 12, 3月に相対重力繰り返し測定を実施した。ここで得られた相対重力データは将来の火山活動を質量変動の観点から評価する際に有効活用されると期待される。
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