研究課題/領域番号 |
15K17751
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
相澤 広記 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50526689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 溶岩ドーム / 地すべり / GPS / 熱水変質 / 比抵抗 / 自然電位 |
研究実績の概要 |
本研究は噴火停止以降20年に渡って定常的に地すべり的運動が生じている雲仙平成新山溶岩ドームにおいて、GPS繰り返し観測と、電磁気的な構造調査を行い、地すべり的運動の位置とそのメカニズムを解明することを目的としている。(1)変形は地すべりである。(2)溶岩ドーム内部の熱水変質帯の上面がすべり面である、さらに、熱水変質帯が粘土化し低浸透率なため、その上面に地下水が集中し、そこで間隙水圧が高まり、地すべり面になっているという作業仮説を設定する。熱水変質帯の広がりを電磁気観測により、地すべり的運動をGPS繰り返し観測により明らかにし作業仮説を検証する。 本年度はGPS繰り返し観測を行わず、その準備と、自然電位観測を行った。平成新山溶岩ドームに対し南西側の仁多峠、普賢岳方面からアクセスする測線での自然電位測定を行い、さらに仁多峠と有明海を結ぶ測線での測定を行った。これにより溶岩ドーム山頂部は海水準とほぼ等電位であり、その西側を低電位異常域に囲まれていることが明らかになった。この結果は海水準付近の地下深部から低比抵抗領域が溶岩ドーム山頂直下まで鉛直に伸びていることを示唆している。電位が海水準とほぼ等しい領域は溶岩ドームの西側には及んでおらず、熱水変質して低比抵抗となっているのは溶岩ドーム山頂部のから数100mのごく限られた領域であることが示唆された。一方で溶岩ドームから東側に位置し、崩壊が最も懸念されている第11溶岩ローブにおいては自然電位観測を行うのは不可能な状況であったため、この高電位域が第11溶岩ローブに対してどのように分布しているのかの課題が残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予算内では既存のGPS測定器が1台しか購入することができなかったが、ほぼ同等のスペックで価格が4分の1である機材が年度末に発売になるとの情報により、今年度はGPS繰り返し観測を行わず、ボルトを打ってのGPS繰り返し測点の設置につとめた。H27年度2月にはこの新製品を4台購入することができたため、今後出来るだけ早くGPS繰り返し観測を行いたい。この機材は連続運用も可能なため、2台は雲仙復興事務所の光波測量の基準点に連続設置し、溶岩ドームに設置されたミラーの動きと、GPS観測を比較可能にする。 GPS観測以外の電磁気観測は、H28年度に予定していた溶岩ドーム周辺での自然電位測定を前倒しで行った。これにより溶岩ドーム山頂部は海水準とほぼ等電位であり、その西側を低電位異常域に囲まれていることが明らかになった。これにより海水準付近の地下深部から低比抵抗領域が溶岩ドーム山頂直下まで鉛直に伸びていることが示唆された。東側の第11溶岩ローブは自然電位観測を行うのは不可能な状況であったため、この高電位域が第11溶岩ローブに対してどのように分布しているのかは明らかになっていない、今後、第11溶岩ローブに山麓側からアクセスする自然電位観測を行い、電位異常域の広がりを調べ、第11溶岩ローブの根が海水準まで達しているかを推測したい。比抵抗構造観測は溶岩ドーム上とその周辺において測定が可能な場所を予備調査により把握した。
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今後の研究の推進方策 |
2016年4月の熊本地震を受けて、平成新山溶岩ドームにも小規模な崩壊が生じた。まずは今後の調査について危険性がないかどうか5月に実際に登山を行い確認する。その後山頂部および溶岩ドーム周辺でGPS繰り返し観測を行う。9~10月には溶岩ドーム直上および周辺で、比抵抗構造推定のための電位差連続観測を行う。磁場観測点を山麓に設置し、電位差データとの周波数応答関数を求めることで溶岩ドームの比抵抗構造を推定し、すべり面と熱水変質帯との関連を調査する。
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