研究実績の概要 |
本研究は噴火停止以降20年に渡って定常的に地すべり的運動が生じている雲仙平成新山溶岩ドームにおいて、地すべり的運動の位置とそのメカニズムを解明することを目的としている。本研究期間中の2017年2月より海水準より高い位置で散発的に地震が発生し始めたため、12点の臨時地震観測を新たに計画に組み込み、震源が平成新山溶岩ドーム直下、地表から200-500mと極めて浅い位置にあることを明らかにした。また、コーダ波に長周期な振動が見られること、地震の継続時間が約20~60秒間と長いこと、初動極性が東方向のごく限られた観測点以外は引きが卓越していること等から流体の関与が高い地震であることも分かった。雲仙普賢岳、平成新山を中心としたおよそ40点で実施した比抵抗構造探査からは、1991-1995年噴火時のマグマ供給路(Kohno et al., 2008) に関連すると思われる低比抵抗体が西側深部から普賢岳と平成新山方向に向かい海水準付近の深度まで伸びていることが分かった。普賢岳と平成新山の下ではさらに浅い位置に、半径500m、厚さ500mほどの低比抵抗体が存在しており、前述の浅い地震の震源はこの低比抵抗体の上面付近に位置していることが分かった。低比抵抗体は数10Ωm程度とそれほど低い値を示さないことから熱水変質した粘土層と考えるよりは空隙を熱水が満たしている領域と考えられる。平成新山溶岩ドームの浅部で熱水が (押しの極性が観測される) 東方向浅部に移動することにより地震が発生している可能性がある。流体の供給は地すべり的な運動を加速させる可能性があるため、地震データ、地殻変動データを注意深く解析し、地震が地すべり的運動に与える影響や、震源付近がすべり面となっている可能性を検討する。現時点で観測できている浅部地震数が数個程度と少ないため、観測を継続していく予定である。
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