研究課題/領域番号 |
15K17753
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
利根川 貴志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究員 (60610855)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 異方性構造 / 海底下構造 / レシーバ関数法 |
研究実績の概要 |
海底下浅部の異方性構造をレシーバ関数法によって推定するため、合成波形を計算するソフトウェアの開発を行った。 海底に設置された地震計の波形を取り扱うため、海水の影響を考慮する必要がある。そのため、本研究ではreflectivity法を採用し、下方から平面P波が入射したときの海底で観測される波形の合成に成功した。また、異方性構造を導入する際には過去の研究の理論式(Fryer and Frazer 1984; 1987)を参照し、任意の異方性構造(対称軸の傾きや異方性の大きさ)を取り入れて波形の計算ができるようになった。さらに、海底堆積物は柔らかく波形の減衰が大きいことが指摘されているため、波形計算の際に減衰の影響を取り入れられるよう、小田(2015)の理論式を参照して改良を行った。 現在、初年度に収集した観測データと合成波形が合うような構造を求めるため、上記のソフトウェアを用いた逆問題を解くプログラムを開発中である。逆問題は焼きなまし法を採用している。最終年度前半は、観測波形ではなく合成波形を使用して逆問題の収束性を評価することに重点を置く。 また、異方性構造の推定を確実なものにするため、あらかじめ等方性S波速度構造を推定しておくことも検討している。これに関しては、海底地震計と圧力計の記録を用いた手法を同時並行で開発中である。現在、南海トラフ域のS波速度構造がマッピングできるようになり、それらの成果を日本地球惑星科学連合2016年大会で発表した。 海底堆積物の知見を得るため、カスカディアの海域データを使用して異方性構造を推定していたが、その研究が国際誌に出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、異方性を考慮した合成波形を計算するプログラムが完成した。このプログラムでは、当初の計画にはなかった減衰の影響も考慮した波形計算が可能となっている。さらに、計算速度も期待していた通りの速度で、逆問題にも十分適用できるぐらい速い。実際に現在逆問題のプログラムを実装し、何千回の計算にも(時間的にも安定性でも)耐えうることを確認した。 同時並行で進めている手法開発も当初の予定にはなかったが、こちらもS波速度構造推定の有効性が実証され、本研究でも活用できる可能性が高くなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、逆問題が本当に解けるのかどうかを合成波形を用いて検証し、それが終われば観測波形に適用して実際の異方性構造の推定を試みる予定である。ただし、現在、逆問題を解く際には焼きなまし法を採用しているが、収束が悪い場合は他の手法を取り入れなければならない。この収束性は時間をかけてしっかり確認する必要がある。もしこの確認に時間がかかった場合は、重要と思われるいくつかの観測点記録に適用して異方性構造を推定し、それらの構造に関して考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した計算機が、当初の見積もりと同じスペックでより安く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
EGU General Assembly 2017での発表の渡航費の一部に充てる。
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