研究課題/領域番号 |
15K17754
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古市 幹人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (50415981)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マグマだまり / 混相流 / 数値計算 / ストークス流 / 個別要素法 |
研究実績の概要 |
マグマだまりの再加熱過程におけるマッシュと呼ばれる結晶に富む層の挙動、特に下部からの高温マグマの貫入により内部崩落過程に注目している。マッシュ状態においては、高密度な結晶と低密度なメルトの間の密度差のため、加熱に際する流動化とともに組成分離が進むが、一方で結晶沈降により粒子が集積すると、臨界充填率付近では著しく流動性を失う。このような負のフィードバックが顕著に表れる場面として、マッシュ層の下部にマフィックなメルトが存在する場合を考えた。下部から貫入するマフィックなマグマの密度は、上部のメルトよりも高いため、対流を抑制する2重拡散対流となり、物質の混合を妨げる。加えて結晶の沈降が上部で起きると、密度境界において干渉沈降の速度差により結晶がトラップされ結晶充填率が高くなり、さらなる混合を妨げる可能性がある。本課題では、これらの定性的な素過程の理解を定量的にするための数値計算を行っている。数値計算に用いるのは、我々が開発したStokes-DEMコードである。 計算の結果、上下メルトの密度差が小さい場合には、単純な結晶粒子の干渉沈降と下部加熱により熱対流が形成され、密度差を大きくするとメルト間の2重拡散対流により熱対流の成長は妨げられた。さらに密度差を大きくすると、粒子層のメルト境界でトラップする事が確認された。定量的にも、このようなトラップが起こり得る密度差はマフィックなメルトで十分可能性があった。ただし、これらは球形の結晶を仮定した場合であるため、実際の事象と比較するためには、非球形への固体要素モデルの拡張が必要であり、DEM粒子を結合する事で非球形の固体要素を扱える事が出来るようにコード拡張を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題がターゲットとした、粒子-流体混相流における2重拡散対流問題は、マグマだまりの熱的、物質科学的進化を考えるうえで非常に重要であり、既往研究もほぼ存在しない。それゆえに研究の意義は大きい。しかしながら一方では複雑な計算コード開発が必要となる。開発済みのコードにおいてシングルセル程度の対流計算は可能であったが、ドメインサイズや粒子数について系統的な調査を行うには大規模計算が必須であり、そのための並列化技術開発に大きなコストが必要であった。また2重拡散対流においては数値振動の問題が存在するため、問題解決のためのチューニングにも時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2重拡散対流におけるダイナミカルなマッシュ層の形成仮説を裏付けるためのプロダクトランを実施し、空間アスペクト比、粒径や粘性差等のメルトの密度差以外の要因についても結晶がトラップされる作業仮説が成り立つのかどうかを明らかにする。また該当年度に開発した非球形な固体要素によるマグマだまりの数値実験を行う。一方、当初予定していた結晶の成長モデルを含めた計算は解析すべき現象が複雑になりすぎる為、本課題の対象外とすることで、議論を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりもプロダクトランの回数が少なく、ポストプロセスの効率化のためのマシンの購入を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ポストプロセス環境の整備に費用を重点的に充てる。また海外発表の計画と、査読中の論文のリバイズに伴う英文校正費や出版費用に出費が見込まれる。
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